「二元論」(2)のつづき

2021-02-08 07:46:22 | 「二元論」

           「二元論」

 

            (2)のつづき


 形而上学的境涯、つまり「存在とは何か?」を問うことに生涯

をかけたニーチェにとって最終結論である実存主義思想はもの足

りなかった。「神は死んだ」「この世界が全てだ」では何よりも

精神の居場所がなくて忽ちニヒリズムに陥る。事実存在がすべて

であれば世界は意味を失う。しかしモノが消えても想いは残る。

そこでニーチェは新たな精神をニヒリズムにこそ求めた。超人思

想とは精神主義者ニーチェの実存主義からの転回にほかならない

。永劫回帰説とは「この世限り」の実存思想の全否定である。つ

まり、ニーチェもまた事実存在としての実存と本質存在としての

精神の二元論に逡巡した。形而上学的境涯とは最終結論が出たと

しても形而上学的思惟から離れることができない。

                       (つづく)