「あほリズム」(802)(803)

2021-02-13 02:24:35 | アフォリズム(箴言)ではありません

          「あほリズム」

           (802)

 

 われわれは生涯を振り返って、何か一つでも意味のあることを成

し遂げたかと問えば、たとえば、ある者は赤貧の身から一代で巨額

の蓄財を為しただとか、ある者は先祖が築いた巨額の遺産を一代で

食い潰しただとか、また、ある者は世界中を旅したとか、またある

者は生涯自室に引き籠って命を終えただとか等々、それら、謂わば

自らの臨終と共にいずれ何一つ残らない痕跡でしかないとすれば、

われわれが為し得る唯一の意味のあることは、子孫を残すこと以外

に何もないのではないだろうか。

         

          (803)

 

 子孫を残すこと以外に何一つ痕跡を残すことなどできない個人が

集った社会において、その社会の歴史を振り返ってみれば、なるほ

ど様々な生存のための様々な手段が考え出されたが、しかし、それ

らの手段によって唯一成し遂げられた目的は、種族の増殖以外に何

一つない。つまり、われわれの世界はひたすら人類を増殖させるた

めに営まれてきた。そしてそれは何も人類だけに限られたことでは

ない。確かに、われわれが生存するための手段は格段に増えたが、

しかしその目的は未だ動物たちと何ら変わらない。