「二元論」 (10)

2021-05-31 07:31:01 | 「二元論」

            「二元論」

 

             (10)

 

 そもそもハイデガーは思想的転回(ケ―レ)の前には大きな文化的

転換を企てていた、と木田元は言う。それは、「『時間と存在』の

章において彼が企てていたのは、現存在(人間)を本来性へ立ちかえ

らせることによって存在了解の転回をはかり、――可能か否かは別

にして――彼なりの考えで『物象化の廃棄された』世界構造、存在

の根源的な意味にもとづく新たな世界構造を獲得すること、つまり

は、壮大な文化の転換ないし歴史の転回をはかろうということだっ

たのではあるまいか。」そして「その新たな世界構造は、生きた自

然というものと密接に連関しているように思われる。」(木田元『ハ

イデガー』岩波現代文庫・学術67) それは、形而上学的思惟によっ

てもたらされた固定化した科学主義文明の転換であり、そして人口の

限界に達した人間中心主義(ヒューマニズム)文化の転回にほかならない。

 

*「物象化」・・・人と人との関係が物と物との関係として現れる

こと。カール・マルクスが『資本論』で使った概念。(Wikipedia)

 

                        (つづく)