「あほリズム」
(653)
かつて我々の精神は神に依存したが、今では科学に依存している。
果たして我々の精神は「自立」することがあるのだろうか?
(654)
「神が死んだ」と説いたニーチェはこう言います、
「われわれは、真の世界を破棄した。いかなる世界が残されたか。
もしかすると、仮象の世界でも?・・・・断じて否。われわれは、
真の世界とともに、仮象の世界をも廃棄してしまったのだ。」
* * *
「真の世界」とは永遠不滅の「神の世界」、つまり「あの世」の
ことで、信仰を破棄した者は「仮象の世界」、つまり「この世」を
「真の世界」と思えるだろうか?しかし、われわれはいずれ死んで
しまう。だとすれば、果たして存在しなくなる世界を「真の世界」
と言えるだろうか?「神の世界」を棄てたことで「この世」も意味
を失ってしまったのではないか。こうして世界はニヒリズムに陥る。
そして、ニヒリズムから遁れるために神に代わって科学技術が発達
した。われわれは小石で遊ぶ猿のように科学技術を玩(もてあそ)ぶ。
しかし、科学はせいぜい世界の一部でしかなく決して世界全体を認
識できない。
(655)
われわれは「真の世界」(神の世界)を破棄した。そしてニヒリズム
に陥った。ニヒリズムを紛らわしてくれたのがまさに科学技術である。
つまり、われわれの依存が神から科学に代わっただけのことである。
われわれは決して自立していない。