【 2014年4月21日 】 京都シネマ
タトゥー・デザイナーのエリーゼとブルーグラス・バンドのバンジョー弾きのディディエが恋に落ちる。
子どもができて、家も建て、エリーゼはバンドのヴォーカルに加わり、順風満帆の人生のように見えた。
ところが、4歳になろうかとする娘のメイベルは白血病にかかっていた。
娘の死を機に、それまで問題にならなかった二人の価値観の違いが諍いの元になる。身体中にタトゥーを刻み込んでいるエリーゼに対し、消せないものを身体を傷つけたまで刷り込むのは反対だというディディエ。死んだ者は無で、何者にも生まれ変わったりはしないというディディエに対し、娘から何らかのメッセージを期待するエリーゼ。
あるライブ・ステージで1曲目を歌い終わった後、ディディエは感極まり、心情を聴衆にぶちまけてしまう。家で見ていたテレビの「ブッシュの演説」が頭をよぎる。アメリカ贔屓のはずのディディエの口から、カトリック教義の保守的な面にしがみついたブッシュとローマ法王に浴びせる罵声が発せられる。
『戦争では最新の殺戮兵器を導入しているのに、生命を救うための最新医療は認めない』のはどういうことか、人間のくず以外の何物でもない、と。
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数日前に見た、『なにもこわいことはない』(京都みなみ会館)を思い出し、比べてしまった。
平凡な若い夫婦の日常の物語である。期せずして《子どもができてしまった》ときも、行き違いはあるのだが、争いに発展することもなく、その後どうなるでもないい。いったいこの先どうなるのか、何を言いたかったのか、よくわからなく、最後のシーンもどうして終わったのか、今思い出そうとしても思い出せない。
日本人と欧米人の違いなのか、個性の問題なのか、よくわからないが実に対照的な映画だった。
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ドイツ製のアメリカ映画かと思っていたら、ベルギー製作の映画だった。
全編に流れる音楽がたまらなくよく、ブルーグラスの魅力に取り付かれてしまった。ポスターから感じる《チャラチャラ》した薄っぺらい内容の映画ではなく、観たあと《心にずっしりしみる》内容の濃い映画だった。
『オーバー・ザ・ブルースカイ』-公式サイト