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『皇后・美智子さまの満83歳誕生日』にあたっての宮内記者会への「質問回答文書」を読んで

2017-10-25 11:28:32 | 報道


     【 2017年10月24日 記 】

 10月20日の新聞紙面で、『皇后・美智子さまの83歳誕生日』に際しての記者会への「質問回答文書」の記事を目にした。読んでみて、右傾化する支配体制の中で、今一番理性的であるのは皇室の方々ではないかと、ふと感じた。

 「回答」では熊本地震や豪雨で被災した人々への心遣いから始まり、ベトナムでの体験や糸魚川大火での教訓の話にもおよぶ。更に国内にとどまらず、英国のEU離脱問題や、軍縮問題に合わせて中満泉さんが国連軍縮担当の上級代表になったことについての感慨も寄せる。
 そうした中で今年一番の懸念は「原発事故」や「自然災害」の被災地の復興の問題だという。合わせて、「奨学金制度」の問題と「海外からの移住者の子どもの処遇」の問題も挙げる。カンボジアでの例で、日本人の海外貢献ー特にアジアへの貢献を挙げて、更に、iPSでの医療界への貢献や、スポーツ界の活躍に関しては個々人の名前を挙げ言及し、将棋の話までにも及ぶ。ノーベル文学賞でイシグロさんが受賞した話もして、同平和賞では「ICAN」が受賞したことについて、次のように語っている。
 『平和賞は、核兵器廃絶国際キャンペーン「ICAN」が受賞しました。核兵器の問題に関し、日本の立場は複雑ですが、本当に長い年月にわたる広島、長崎の被爆者たちの努力により、核兵器の非人道性、ひとたび使用された場合の恐るべき結果等にようやく世界の目が向けられたことには大きな意義があったと思います。そして、それと共に、日本の被爆者の心が、決して戦いの連鎖を作る「報復」にではなく、常に将来の平和の希求へと向けられてきたことに、世界の目が注がれることを願っています。』               
 このあと、今年亡くなった人々への哀悼の意を述べられた後、最後に「陛下の御譲位」について「高齢になった今、安息の日々を持てることに安らぎを覚え、可能にしてくれた皆様に感謝する」と結んでいる。

                    

 「ICAN」の受賞に関して一切を語らない日本の首相に対し、上の言葉はなんと重みのあることか。また、「天皇の退位」に関しては、ずっと昔に読んだ『明仁さん、美智子さん、皇族止めませんか』(「宮内庁から愛をこめて」の副題、板垣恭介著、2006年 大月書店刊)を思い起こす。この本は、今読んでも実にいい内容の本だ。

 断っておくが、私自身は「皇室の擁護者」でもなければ、「天皇制」を支持するものでもない。憲法と民主主義を尊重し自由を愛する《しがない一庶民》である。

 「天皇象徴制」の下で、天皇や皇室の発言は、憲法第4条1項の「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。」とあるように政治的行為はかなり制限されている。そして第7条で「天皇の国事行為」が列挙されている。従って、行為だけでなくその発言も、政治にかかわることはかなり制限されているとみるべきだ。
 戦前の絶対的権力が天皇に集中されていたことを思えば、そして、周囲の様々な思惑から『象徴天皇制』が残った現実からすれば、それはある意味当然の事であるが、上の言葉は「皇室の《いま許される》精いっぱいの良心の発露」のように思われる。

 歴史は皮肉だ。

 安倍自公内閣が、好き勝手なことをして国民を戦争態勢に導こうとしている支配体制の中で、今、皇室が一番冷静で良識を持っているように思われるのは、どういう巡り会わせなのだろうか。



                                      






         【 上の写真・文書、いずれも 2017年10月20日「毎日新聞」朝刊より転載 】






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