[2007年10月14日]京都シネマ
世の中が進化し物質的に豊かになる一方、人と人の絆はその富の分配を巡って、ゆがみを生じてくる。
イギリスでは資本主義という階級社会が日本より遙かに早く始まり、年代的には老年期に入っているようにも思える。
日本はその点、始まる時期も遅かったが封建的色彩を多く残した中途半端なものだったから、ついこの間まで「一億総中流」だとか呑気なことをいっていた。
だからこの映画の冒頭で、「労働者階級の子供たちだけがが通う学校」なんていわれてもぴんと来ない。ようやく日本でもぼちぼち格差のことがいわれ始めているし、裕福な家庭の子女は小学校から地元の公立なく、私立の小学校に行くのがトレンドになってきている。
映画は、卒業後はすべて工場の労働者か作業員しか約束されない、そんな学校で美術の教師として赴き、一人の生徒の才能を見い出し伸ばそうとするが、行き違いでスキャンダラスな事件が起きることで、別の方向に展開する。その秘密を探りあて操ろうとする者と翻弄される家族。家族とは、愛するとは何かが問い詰められる。ある意味、怖い映画である。
昔、自分らの中学でも、教師と女生徒が恋仲になり、その後結婚に至ったケースもあったが、その時は「そんなものか」と深くは考えなかったが。
シーバ役のケイト・ブランシェットという女優、どこかで見たと思ったら「ヴェロニカ・ゲリン」だった。
「あるスキャンダルの覚え書き」-公式サイト