【 2019年5月21日 】 京都シネマ
息をもつかせぬ緊迫した2時間。冷酷な国家体制の下では、【人が普通に暮らすこと】、【友を裏切らずに信念を貫いて生きること】がいかに困難かを思い知らされる映画だった。同時に、それに抗して展開された高校生たちの示した連帯の意識のすばらしさ!
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東ドイツの指導者層から将来の地位を約束された“エリート”のみが集められた高校のあるクラスの生徒たちが、ちょっとした出来事で“国家を揺るがす”とされる事件に巻き込まれる。
西ベルリンに外出した時にたまたま知ってしまった「ハンガリーでの政府に対する反逆事件」で死者が出たことに対し、連帯の意味を込めて「2分間の黙とう」をすると一人が言い出したのがそもそもの始まりだった。はじめは、事がこんなに大きくなるとはだれもが思ってもみなかった。
でも、もう後戻りはできなかった。
ここからがこの映画のすごいところだった。息をもつかせぬ展開-政府上層部の陰湿な調査とそれに対する生徒たちの気持ちの交錯。
ひとりひとりの生徒がありきたりのパターンで単純に描かれているのではない。それぞれの親の経歴や思惑もあり、しがらみ含め、個性的に描かれている。
必ずしも皆の考えが同じではないのに、陰湿な企みが展開されるにつれて、結束していく様が見事に描かれていく。
最後は、映画のタイトルのように希望へと収束していく。
『善き人のソナタ』とか『東ドイツから来た女』とかいう、冷戦時の東独の暗部を描く映画があった。それらと違って、この映画は「希望」を映し出してくれる。
『アイヒマンを追え!ナチスが最も畏れた男』を撮った同じ監督だと知って、なるほどと思った。
パウルのおじさんが高校生の間に入って貴重な役割を演じていた。苦闘の歴史の中に、こういう『かけがいのない人』が沢山いたんだろうな、と思いを馳せる。
いい映画だった。
『僕たちは希望という名の列車に乗った』-公式サイト
『アイヒマンを追え! ナチスが最も畏れた男』-マイブログへジャンプ