【 2019年4月26日】 MOVIX京都
衝撃的な映画・ドキュメンタリーだ。今までみていなかったようなナチスの鮮明で貴重な映像と、次から次へと映し出される初めて見るような美しい色彩の貴重な絵画に圧倒される。
ともかくスクリーンが美しく、そこに映し出される絵画をみているだけでもワクワクしてくる。
ナチスの生々しい映像も臨場感がある。ナチスが猛威を振るい、隣国に次から次へ襲い掛かり人々を不幸に陥れるだけでなく、美術品も手当たり次第に盗んでいく。こんな映像もあったのかと、驚かされる。
その中心にいたのがヒトラーと腹心のゲーリングの二人だ。ヒトラーとゲーリングは趣味が異なって、ヒトラーが嫌ったものをゲーリングが懐に入れるという構図らしい。
また、ナチスは芸術をその政治支配に利用すべく、人々の思想も操ろうとして、「アーリア人の理想芸術」と「退廃芸術」の2つに分類してそれぞれの展覧会を開いている。後者には、ピカソをはじめとしてゴッホ、ガンディンスキー、ムンク、クレー、ブラックなどの絵画が含まれているが、それらを売却して軍資金に替えていたという。
ナチスがヨーロッパで略奪した芸術品の数はおよそ60万点という。戦後70年以上を経た今も、約10万点が行方不明という。この映画の中にもあったが、いつかテレビの報道で「アパートの一室から大量の美術品が見つかった」というやっていたのを思い出した。
最近の映画で『黄金のアデーレ 名画の帰還』というのがあった。苦難の歴史とともに、1つの絵だけでも、それを元の所有者に盛り戻すことが如何に困難かがそこに描かれていた。それが、他にも同じようなケースが何万もあるというのだ。
「黄金のアデーレ」の元の所有者の場合は、アメリカに逃れて命を奪われずに済んだから、何十年もたってから返還交渉をすることができたが、多くのユダヤ人をはじめとする多くの元所有者はガス室に送られてそれも叶わない。
映画の中で、そのうちの人々が『テレージエンシュタットに送られ、その後アウシュビッツに送られた。』とナレーションで語られていた。「テレージエンシュタット」で思い起こされるのは、映画『ナチス、偽りの楽園』(これもドキュメントだったか)という衝撃的な映像だ。「ハリウッドに行けなかった映画監督」という副題で、クルト・ゲルンというユダヤ人映画監督の顛末を、ナチの芸術政策とホロコーストを背景にして描いている。
【 ピカソ と ヒトラー 】
チャップリンとヒトラーは同じ年月に生まれたとこの映画でも紹介されたが、全き違った人生を送った。地球を手玉に取る『独裁者』のシーンもこの映画に紹介されている。また、ヒトラーが画家を目指したものの、2度も美術学校の入試に落ちたことも紹介されている。合格していたら、その後の世界史も変わっていたかもしれないという憶測もあるが、ピカソとは全く違っていただろう。
映画の最後にピカソの言葉が紹介される。
衝撃的で、かつ美しい、いい映画だった。
『ヒトラーVSピカソ-失われた名画のゆくえ』-公式サイト
公式サイトの「予告編」-2分足らずの映像だが、この映画の魅力を紹介している・・・一見を
『黄金のアデーレ_名画の帰還』-公式サイト
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