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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

「ロシア 語られない戦争」-チェチェンゲリラ従軍記

2009-04-12 18:06:09 | お薦めの本
 著者、常岡浩介が「はじめに」で冒頭に書いている。

 《アンナ・ポリトコスカヤの著作「チェチェン やめられない戦争」(NHK出版)、アレクサンドル・リトビネンコ著「ロシア 闇の戦争」(光文社)とそっくりというか、足して二で割ったようなタイトルの本ですが、内容はパクリではありません》
 、と。
 パクリではないどころか、イスラム教に改宗してまでしてゲリラに従軍し、生死の境を体験した者でしか書き得ない貴重なレポートである。

   ○     ○     ○

 『チェチェンゲリラ従軍記』と副題にあるように、第1章がその従軍のリアルな様子が描かれている。 

 直近に「チェ、28歳の革命」、「チェ、39歳別れの手紙」を見たが、その映像の記憶とあわせて、ゲリラの生々しい様子が浮かぶ。特に、「39歳別れの手紙」の方は悲惨だった。食料の補給もなく雨の日も嵐の日も道なき道をあてもなく進む。一口に革命だの武装闘争だのかっこいいみたいなこと言うが、先の見えない行軍が続くだけだ。

 そんなところによく従軍するものだと思ってしまう。

 第1章は、導入でこの本の大事なところはそれ以降の章にある。

 そもそもこの本を読むきっかけとなったのは「暗殺、リトビネンコ事件」の映画を見てからだった。こんなデタラメな事がどうしてロシアで起きているか知りたかった。

 チェチェン紛争とはどんな戦争だったのか。どんな利権や民族問題を抱えているのか。
「コーカサス、国際関係の十字路」(廣瀬陽子著、集英社新書)は初歩的理解をするのに役立った。

            


 コーカサス(カフカス)は確かに日本から一番わかりにくい地域かもしれない。パレスティナとイスラエルの中東戦争を巡る話はよく報道されるし、イラン・イラクやアフガンもよく耳にする。アフリカの飢餓のニュースやチベットのニュースも時折入るが、チェチェンの問題が一般のメディアで知らされることはない。

   ○     ○     ○

 圧巻は第3章の「諜報」だ。
 チェチェンの紛争そのものはほとんど知られていなくても、1999年のモスクワ連続爆破事件や2002年に北オセチアで起きた「学校占拠事件」を知っている人は多いと思う。後者は日本でもその様子が中継され、銃撃戦と大爆発により330名以上の人質が殺害された時のショックは記憶に新しい。

 これらの事件は、チェチェン攻撃の世論を誘導するためにFSB(連邦保安局-KGBの後身)によって仕組まれた犯行であると見られており、著者もそれを裏付ける資料を本書で多数示している。
 そのことを世間に知らしめようとした人々が次から次へ暗殺されたり変死している。
 その代表的なふたりが、冒頭の著作名とその著書を挙げたリトビネンコとポリトコフスカヤだ。
 リトビネンコはポロニウムという放射性毒物を飲まされ殺され、ポリトコフスカヤは何度かの暗殺未遂の後、最期はエレベーター内で、銃で射殺された。
 
  ○     ○    ○

 以前書いたこのブログの記事で、「暗殺、リトビネンコ」を書いたが、そのページにリンクしていた「リトビネンコ事件」の公式サイトが知らない間に削除されていた。何か、空恐ろしいものを感じる。

               
  「アスキー新書-ロシア 語られない戦争」のサイト

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