【巌剛新道上部から振り返り見た白毛門・朝日岳】
2日目、午後。
巌剛新道から西黒尾根に入ると急に賑やかになる。木々もなくなり視界が開け、道は岩がごろごろ露出し、荒々しい風景に変わる。遠景も開けてきた。武尊山や赤城山が手に取るように見える。
左前方には天神平からの尾根が頂上に向かって伸びている。弟はもう頂上に着いた頃だろうか。
勾配はさらにきつくなり、10歩歩いては立ち止まる。登ってきた「マチガ沢」の出合いの谷は遙か下方に小さく見える。こんなに登ってきたんだ。われながらいつも感心する。
はるか南の山並みの向こうには、それとすぐわかる富士山の影が見える。5分登っては、またその姿を確認して、また歩き始める。
そんな事をしながら1時間もも登ってきただろうか。ふと、上方を見上げると弟の姿。遅いから下って様子を見に来たのだ。
午後1時過ぎ、ようやく肩の小屋に着く。売店もあって簡単な食事も出せるようだったが、せっかく食料とコンロを持ってきたのでお湯を沸かしラーメンを作ることにする。ともかく、荷物を少しでも減らさないといけない。火をおこすので、小屋の外で支度をしたが風が強く寒い。ジャンパーの上にレインジャケットを重ねてもまだ寒い。
【俎(マナイタグラ)からオジカ沢の頭への縦走路】
肩の小屋の前から「オジカ沢の頭」方面へ西方に伸びる尾根づたいの縦走路が見える。両側はスパッと切れ落ち、ガスがかかっているからよけいに不気味だ。はじめ、あの道をずっと行こうとしていたのだ。ちょっと一人で行く道ではないと思った。
一休みした後、頂上の2つの耳に向かう。「トマの耳」には10分ほどでついた。耳のてっぺんに立って記念写真を入れ替わりで撮る。反対側をのぞき込むと、足下が垂直に切れ落ちていてマチガ沢に吸い込まれていく。
【谷川岳トマの耳にて】
昼をゆっくり取りすぎた関係で、時計は2時半をまわっていた。ロープウェイの最終時間が気になりだした。「オギの耳」に行くのをためらったが、次にいつ来れるかわからない。急いでいくことにする。
先ほどまで頂上はガスがかかっていて「トマの耳」からは「オギの耳」が見え隠れしていたのが、むかう間にきれいに晴れてきた。「オギの耳」からは、「トマの耳」もちろん、遠くの山もきれいに見渡せた。
【オキの耳から見たトマの耳】
また、「オギの耳」からおっかなびっくりのぞき込む「一ノ倉沢」のものすごいこと。写真で見たのではあのド迫力を再現できない!のが残念。
3時をまわった。大急ぎで天神平まで下りなければならない。肩の小屋で終電ならぬ最終ロープウェイの時間を確認する。5時だから1時間45分しかない。ガイド地図に記された標準タイムは1時間半。ぎりぎりだ。
10分前に、ロープウェー駅の建物が目に入った時はホットした。間一髪で滑り込んだと思ったら、下山の人の長蛇の列。ゴンドラに乗り込んだのは5時半を過ぎていた。
真っ暗になった土合駅の前で私はバスを降り、そのまま水上駅まで行く弟を見送る。弟には世話になりっぱなしだ。
宿に戻り、急いで風呂に入り、夕食では出された「カニ」にびっくり(山小屋で「カニ」なんて今まで想像もしていなかった!)して、酒とビールを注文し、となりのこれまた単独行の少し変なおじさんとおしゃべりし、その後はぐっすり寝る。
(続く)
註:「双耳峰」とか「耳」というのは山容を表す用語で、山の頂上が柴犬の耳のように(別に、キツネの耳を想像してもよい)対になっているもので、谷川岳のほか鹿島槍が有名。「耳」はそれぞれの頂を指す。
『秋の「谷川岳」と「法師温泉」を訪ねる-その4(最終回)』へジャンプ
2日目、午後。
巌剛新道から西黒尾根に入ると急に賑やかになる。木々もなくなり視界が開け、道は岩がごろごろ露出し、荒々しい風景に変わる。遠景も開けてきた。武尊山や赤城山が手に取るように見える。
左前方には天神平からの尾根が頂上に向かって伸びている。弟はもう頂上に着いた頃だろうか。
勾配はさらにきつくなり、10歩歩いては立ち止まる。登ってきた「マチガ沢」の出合いの谷は遙か下方に小さく見える。こんなに登ってきたんだ。われながらいつも感心する。
はるか南の山並みの向こうには、それとすぐわかる富士山の影が見える。5分登っては、またその姿を確認して、また歩き始める。
そんな事をしながら1時間もも登ってきただろうか。ふと、上方を見上げると弟の姿。遅いから下って様子を見に来たのだ。
午後1時過ぎ、ようやく肩の小屋に着く。売店もあって簡単な食事も出せるようだったが、せっかく食料とコンロを持ってきたのでお湯を沸かしラーメンを作ることにする。ともかく、荷物を少しでも減らさないといけない。火をおこすので、小屋の外で支度をしたが風が強く寒い。ジャンパーの上にレインジャケットを重ねてもまだ寒い。
【俎(マナイタグラ)からオジカ沢の頭への縦走路】
肩の小屋の前から「オジカ沢の頭」方面へ西方に伸びる尾根づたいの縦走路が見える。両側はスパッと切れ落ち、ガスがかかっているからよけいに不気味だ。はじめ、あの道をずっと行こうとしていたのだ。ちょっと一人で行く道ではないと思った。
一休みした後、頂上の2つの耳に向かう。「トマの耳」には10分ほどでついた。耳のてっぺんに立って記念写真を入れ替わりで撮る。反対側をのぞき込むと、足下が垂直に切れ落ちていてマチガ沢に吸い込まれていく。
【谷川岳トマの耳にて】
昼をゆっくり取りすぎた関係で、時計は2時半をまわっていた。ロープウェイの最終時間が気になりだした。「オギの耳」に行くのをためらったが、次にいつ来れるかわからない。急いでいくことにする。
先ほどまで頂上はガスがかかっていて「トマの耳」からは「オギの耳」が見え隠れしていたのが、むかう間にきれいに晴れてきた。「オギの耳」からは、「トマの耳」もちろん、遠くの山もきれいに見渡せた。
【オキの耳から見たトマの耳】
また、「オギの耳」からおっかなびっくりのぞき込む「一ノ倉沢」のものすごいこと。写真で見たのではあのド迫力を再現できない!のが残念。
3時をまわった。大急ぎで天神平まで下りなければならない。肩の小屋で終電ならぬ最終ロープウェイの時間を確認する。5時だから1時間45分しかない。ガイド地図に記された標準タイムは1時間半。ぎりぎりだ。
10分前に、ロープウェー駅の建物が目に入った時はホットした。間一髪で滑り込んだと思ったら、下山の人の長蛇の列。ゴンドラに乗り込んだのは5時半を過ぎていた。
真っ暗になった土合駅の前で私はバスを降り、そのまま水上駅まで行く弟を見送る。弟には世話になりっぱなしだ。
宿に戻り、急いで風呂に入り、夕食では出された「カニ」にびっくり(山小屋で「カニ」なんて今まで想像もしていなかった!)して、酒とビールを注文し、となりのこれまた単独行の少し変なおじさんとおしゃべりし、その後はぐっすり寝る。
(続く)
註:「双耳峰」とか「耳」というのは山容を表す用語で、山の頂上が柴犬の耳のように(別に、キツネの耳を想像してもよい)対になっているもので、谷川岳のほか鹿島槍が有名。「耳」はそれぞれの頂を指す。
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