【 2016年1月8日 】 TOHOシネマズ二条
この映画は米ソ冷戦下でのスパイと、その捕虜交換をめぐって活躍した民間人の弁護士を描いたものであるが、一般の報道では知られていない《政治の裏》が垣間見られる。
「スパイ」というと《国を売り渡す国賊》のようなイメージが先にくるが、この映画でもそうであるように必ずしもそうでない場合が多い。国の安全と平和を求めるための「情報収集活動」と考えれば、スパイも非人間的な卑怯者ではなく、別の姿も見えてくる。
この映画のソ連のスパイと言われる「アベル」もそのような人間として描かれている。
「アベル」の人柄を見て思い浮かべるスパイ映画は『スパイ・ゾルゲ』と『フェアウェル、さらば哀しみのスパイ』である。「ゾルゲ」は日本で活躍したスパイだが、この映画の主人公の1人アベル同様、芸術を愛する人間性のある人だと聞いている。「フェアウェル」のほうは、顔だちこそごついが、ソ連を崩壊に導いた信念を持った人だった。
一方、弁護士の『仕事』の方に焦点をあてれば、【誰も引き受けたがらない】死刑囚らの弁護をする不屈の弁護士の信念を描いた映画『死刑弁護人』を思い出す。この映画で、安田弁護士が【誰も極刑を望むような】凶悪犯の弁護を次から次へと引き受けることに対し、世間の風当たりは強かったが、今度の映画でも、【敵国のスパイ】を弁護する立場になったドノヴァンは周囲から冷ややかな目で見られる。
しかし、一見凶悪犯罪であっても、敵の憎むべきスパイであっても裁判を受ける権利はあると主張できるあたり、やはりアメリカの民主主義の懐の深さを感じる。
一口に同じスパイ映画といっても「007シリーズ」などとは全然違う。一方、映画「イミテーション・ゲーム-天才数学者とエグニマの秘密」も諜報活動にかかわることと思えば一種のスパイ行為である事には変わりはないが、《英雄》として描かれている。
アクションはないけど、緊張した2時間だった。
『ブリッジ・オブ・スパイ』-オフィシャルサイト