【 2016年1月2日 】 京都シネマ
元旦の酔いのさめる間もなく、四条まで出かけ、今年最初の映画を見に行く。
「イラク」とか「シリア」とか、またどこかの現実の国を舞台にした映画かと思っていたが、そうでなく架空の設定になっている。だいたい《冷血な独裁者》が《かわいい孫》を連れて逃避行をするという話が現実離れしていて、どこか【大人の寓話】みたいで、緊張感がないのではと見ていた。
映画の冒頭で、【独裁者】がその権力を孫に示すために、街の全ての灯りをスイッチ一つで操作するように、部下に命令して「消したり、灯したり」を繰り返す。孫は、その様子をバルコニーからクリスマスのイルミネーションを見るように嬉々として見ている。それを数回繰り返したのち、【命令】に従わず点灯しなくなる。【革命】が起きたのだ。
親族に同行せず、国外に逃げ損ねた【独裁者と孫】の逃避行がそこから始まる。
【独裁者】が城から追われ民衆の中に紛れる中、孫の視点を交えながら、その悲惨な実態を目の当たりにする。【独裁者】、そんな簡単に気持ちが変わるのかとも思われるが、無垢な孫との会話が効果的だ。
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【独裁者】もギターを演奏するが、映画の中に挿入される【貧しい人々】が奏でる歌や音楽が素晴らしい。
最後は結局、民衆に捉えられてしまう【独裁者と孫】。その結末が圧倒的だ。
架空の世界から一気に現実の世界に引き戻される。
監督のこの映画に懸けた思いは、下のメッセージを見れば明らかだ。
『・・・しかし勝利を手にした瞬間に、大抵はまた、勝利を象徴づけた同じ暴力行為によって
もたらされる新たな悲劇に直面するのです。ですから、ある意味で革命以前に存在して
いた暴力は、何らかの形で革命後に引き継がれていると言えます。そして悲しいことに、
多くの人々や国々が、この途切れることのない負のサイクルから抜け出せなくなってい
るのです。
残念ながら、私たち人間が、この状況を打開するためのよりよい文化を築けない限り
は、悪しきループを断ち切ることはできないでしょう。この映画を作ることで、小さく
とも新たな文化を築く足掛かりになればよいと願っています。』
【・・・負のサイクル、暴力の連鎖を断ち切るために、今何が必要なのか、自分らに問いかけられている・・・。】
『独裁者と小さな孫』-公式サイト