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【 2013年4月12日 】 京都シネマ
映画は、1986年4月26日-現在のウクライナにあったチェルノブイリ原発で事故がおこったその日-に、そこから3キロしか離れていない小さな平和な街・プリピャチでの若いカップル、ピュートルとアーニャの結婚式の場面から始まる。
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前日までは、のどかな風景の中に家族やカップルが水辺ではしゃいだり、5月1日の「労働際」の日に向けて開園準備の進む遊園地には大きな観覧車も完成している。
それまで晴れていた空が雲に覆われ、黒い雨が降り出す。消防士である式場の新郎ピュートルは「山火事の消火」にあたるという事で、緊急招集される。
住民に『原発事故』のことは知らされなかった。近くを軍隊の車がせわしく走り抜けるだけである。
一方、技師であるアレクセイに原発事故を知らせる電話が入る。しかし、《秘守義務》があり、住民に事故のことを知らせることが出来ない。
周囲にも次々異変が起こるが、人々は《黒い雨》も《放射線》をも、それから避けることを知らない。
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ピュートルは2度と戻ることはなかった。
シーンは、10年後のプリピャチの街に移る。アーニャは街にとどまり、『原発ツアー』のガイドをしている。事故を起こした4号炉は『石棺』というコンクリート製の建造物でおおわれている。アーニャは、事故の証人のように、ツアー参加者に説明の文言を毎日同じように繰り返す。(その作業をするのにどれだけの作業員の命が犠牲になったか。)
「5万人以上の人が避難をしました。」「私物の持ち出しは一切禁止されていました。」「事故後、30キロ圏内は立ち入り禁止になっています。」
事故後、ツアーに参加して初めてプリピャチの街に戻った、アレクセイの息子のヴァレリーは父の死を信じられないで、その亡霊を追い続ける。
一方、別の世界で、アレクセイは、プリピャチには絶対停まらない列車に乗り、何度もプリピャチへの帰郷を目指す。
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映画の中で、ロシアで当時広く歌われていたと思われる『百万本のバラ』が効果的に使われていて、哀愁をそそる。(この曲は、同じ頃日本でも加藤登紀子の歌で流行ったから私もよくメロディーを覚えている。)
現在イスラエルに住み、ウクライナ人の母を持つ、この映画の女性監督が『故郷よ』を最終編集しているときに、『フクシマ』の事故を知ったという。27年前の事故の教訓が生かされず、作った映画と同じように、再び何十万の人々が故郷を追われ、避難生活を余儀なくされている現実に心を痛めているという。
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【 近年のプリピャチ風景 】
《 地震をやめる 》ことはできないが《 原発をやめる 》ことはできる。
それでも、安倍さん! 原発にしがみついている皆さん! 原発を、まだやめませんか!!
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この映画の後に、もう1本観たいと思っていたドキュメンタリー映画『プリピャチ』があったが、時間がないのと《1日に3本というのはさすがにきつい》ので断念することにした。(『プリピャチ』はその日が上映最終日で、後がなかったから是非と思ったが、2本目ですでに睡魔が刺してどうにもならず、残念!)
『故郷よ』-公式サイト
『百万本のバラ』-の音声と映像(You Tube)