【2013年3月10日】
今年は、ヴェルディ生誕200周年ということだ。念願のオペラ『椿姫』をびわ湖ホールに聴きに行った。
家を出て北大路駅に向かおうと思ったら、折しも『京都マラソン』の日。家の近くの加茂街道を数珠繋ぎでランナーが走っていく。駅に行くには加茂街道を横切らなければならないが、とぎれることなく続くランナーの列に阻まれ、渡ることが出来ない。
しかたなく、北山橋の下をくぐってから、北山駅に向かう。
地下鉄北大路駅から御池で東西線に乗り換え、更に市役所前で浜大津行きの京津線に乗り換える。車内は京都マラソンのスタッフやら応援団の人々でごった返している。それでも、京津線に乗り込むと乗客はウソのように減った。
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かねてから、オペラ『椿姫』を聴きたい-それもアリアだけを歌うのでなく総出演の本格的なオペラを本当の舞台で観たい聴きたい-と思っていた。できたら、ミラノ『スカラ座』で本場の『椿姫』をリッカルド・ムーティの指揮で聴いてみたと思っていたけど、そんなことは何時実現できるかわからない。(15~6年前、ムーティーが京都に来たとき、他のオペラの序曲とともに『椿姫』の第1幕への前奏曲だけは聴いたことがある。)
今回の公演はヴェルディ生誕200周年記念のものでもあるし、『びわ湖ホール』と『神奈川県民ホール』等が総力を挙げてプロデュースしたものだから、《チラシの宣伝文句》にもあるように、おそらく今の日本で聴ける最上級の『椿姫』を聞けるだろうと思う。
それと何といっても京都から通える所でやるのがいい。北大路から浜大津までは40分ほどで着く。夏の花火大会もこの路線で行くから、滋賀県といっても、自分の意識では京都の文化圏である。
これを逃したらつぎは何時になるかわからないので、S席のチケットを2枚購入する。
『びわ湖ホール』は3回目である。京都にはオペラができるこれほど大きなホールはない。オーケストラは聞き慣れた京都交響楽団だが、場内の雰囲気の高まりに開演が近づくにつれ、気持ちが高揚する。
場内が暗くなり、指揮者を迎えた後、静かに第1幕への『前奏曲』が始まる。心にしみ入るような繊細なメロディーは何時聴いても美しい。(この曲を聴くと、どうしてかいつも『前穂高北尾根』のジグザグに切れ落ちる優美な姿を思い浮かべる。)
あとは、流れるようにアリアの連続で『乾杯の歌』に続き、2回の休息を交え、あっという間に全3幕の上演が終わってしまった。
ヴェルディのオペラ-その中でも特に『椿姫』は-、全体が流れるような旋律で結ばれ、哀愁のこもったメロディはわかりやすく、そしてアリア間のつなぎに無駄が無く、全体がしまっているので聴いていて退屈しないという、特性がある。『カルメン』やそのほかの有名なオペラは、一部の『アリア』はいいとしても、それをつなぐ部分が冗長で、全編を通して聴こうと思ったら、意味のわからない日本人としては退屈してしまうことが多いのだ。
その点、『椿姫』はすごくわかりやすく退屈しない。全編を通じ多くのアリアの中で、個人的にはジェルモンのアリア『プロバンスの海と陸』が大好きだ。
今回の公演の最大の収穫は、日本のオペラも外国のそれに比べて《ひけを取らない》たいしたものであると知ったことである。
『ヴィオレッタ』の砂川涼子さんは素晴らしかった。
ムーティーが、かつて揶揄して《椿姫や蝶々夫人をプロレスラーのような体格のソリストが演じるのはふさわしくない》と言い、歌唱力も大事だが、それより役柄イメージをそこなわない容姿をもった新人を採用したように、両面を兼ね備えているのがベストだ。
砂川さんは、歌唱力もどこからあのエネルギーが出てくるのかと思う迫力ある声量で、容姿も椿姫のイメージにふさわしい、両方は併せ持った最高のソリストだ。(ムーティーの採用した新人は、歌唱力に関してそれまでのソリストには及ばない印象を自分は持っている。)
舞台装置と演出も素晴らしかった。かつての映画やDVDで劇場の中継録画版を観ただけだが、今までに見たことのない舞台設計と斬新なスタイルは、こういう表現もあるのかと驚かされる。
場内で写真が撮れないのは残念である。言葉で語るより1枚の舞台装置の写真があった方がわかりやすい。カタログを見てもそのような写真が載っていないので、それを伝えることができないのがはがゆい。
午後2時からの開演だったので、幕が降りて外に出てもまだ明るかった。今日のびわ湖は比叡山からの北風が吹き抜け寒い1日だったが、『椿姫』を聞き終えた後の気分は最高だった。
『びわ湖ホール』にまで来たことがあるんですか!すごいですね。
もう少しましな写真が撮れたら良かったのですが《無許可撮影》なもんで・・・。
演出も、他の出演者のみなさんも素晴らしかったです。楽しんで来て下さい。
砂川さんのヴイオレッタはどうだろうか? と、検索していて、このページに入りました。
見事に演じ、歌われたとのこと、一安心です。
彼女のミミを4年くらい前に藤原歌劇団の公演で見ました。
清楚なミミで、とてもよかったです。
今回は二期会主体の舞台ですし、ヴイオレッタはほぼ出ずっぱりの大役ですから、かなりプレッシャーがあるのでは?と心配しておりました。
23日が楽しみです。
びわ湖ホールはあこがれのホールで、昨年12月、念願がかないました。
「コシ・フアン・トゥッテ」
ほんとにすばらしいホールですね。
写真を見て思い出しています。