【 2018年7月30日 】 京都シネマ
トルコのアルメニア人虐殺に関する映画で『アララトの聖母』があって、かなり以前に見たが印象深いものがあった。今度の映画の監督が『ホテル・ルアンダ』の監督だと知って「これは是非見ておかないと」映画館に走る。
世界の歴史の中で虐殺の事実はたくさんあるが、戦争を知らない世代が多数を占める現代にあっては、そんなことがつい最近にもあったなどと想像することは非常に難しい。
映画『ホテル・ルアンダ』を見た時は衝撃だった。こんなすぐ最近に、未開時代のよな野蛮なことが世界の片隅で起きているなんてとても信じられなかった。ずっと以前、風のうわさに聞いたインドネシアの大虐殺も、その後の知見で歴史の真実であることを知って、本当だったんだと驚いた。カンボジアしかり、ダルフールしかりである。
ナチスによるホロコーストだけが、民族浄化・大量虐殺の事例としてきわだっているが、ジェノサイドは世界各地で起こっていたのだ。この映画のトルコによるアルメニア人のジェノサイドは第一次世界大戦中のものでナチスのそれに先立って起こっていた。トルコ政府は現在もその事実を認めていないという。
映画の方は、二人の男性とひとりの女性が中心となって話が進む。
医師を目指すアルメニア人の青年ミカエルとアメリカ人ジャーナリストのクリス・マイヤーズ。その間にクリスの恋人であるアナがいて、アナは同じような境遇を持つミカエルに惹かれる。ミカエルには、自分の学費を工面してくれた許嫁がいるのだが
時代の流れに翻弄され、この三角関係が微妙にこじれ合う。
ただの恋愛物語だったら、そんなものかで終わるが、歴史的背景が織り込まれているから感慨深い。政治と恋愛のあいだで板挟みになっているクリスの立場はどう理解していいのか、いかに打開するか、とても自分には対処できないような葛藤に追い込まれる。なかなかまねのできない人格である。
最後の方の難民を救出するシーンで、フランス艦船の船長役でジャン・レノが良い役回りをしていた。
歴史を垣間見るだけでなく、ロマンス映画としても壮大なスケールでの映画に仕上がっていた。
ちなみに、アルメニアがいったいどこにあるかというと、下の地図を見れば、トルコの西・ロシアの南・イランの北に位置し、ここはアゼルバイジャンとかジョージア(以前のグルジア)やチェチェンとかの紛争の絶えない地域にある。ちなみに「アララト山」はトルコの西の端-地図上の《アルメニア》という字の下あたりにある。
『THE PROMISEー君への誓い』-公式サイト
『アルメニア人虐殺』の解説ページ(Wikipedia)
『世界史の窓-アルメニア』
『アララトの聖母』に言及したブログ(2003年のちょっと古いものですが、その頃マイブログが無かったので)