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【2013年1月30日】 京都シネマ
『プンサンケ』(豊山犬-獰猛な猟犬で、一度捕らえた獲物は決して放さないという)とは、北朝鮮製のたばこの銘柄だそうだ。正体不明の謎の男-《スパイか、はたまた“忍者”か》が吸っているたばこがそれなので、男はそう呼ばれているという。
前半は、38度線を自由に往き来し《離散家族の消息を知らせる手紙》や《家族の最期の映像》を運ぶこの男の活躍ぶりが描かれ、後半どんな展開になるか興味津々だった。
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南北にそれぞれ生き別れとなった後、生死不明の夫の消息を探し当て《最期の映像》をもって妻の元に届けたり、北に残された子どもを南の家族の元に連れ戻したりする、正体不明の男『プンサンケ』の活躍は、今の分断統治の朝鮮の悲劇を象徴的に現している。
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韓国情報局に匿われた《北朝鮮元高官》の愛人を“南”に連れて来るというたりから話がおかしくなる。
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映画だから、38度線を越えるときに見せるような《超神業と思える》忍者のような身のこなしなど、多少現実味が無いのは許せる。
しかし《亡命したという元北朝鮮の政府高官》という人物は何なのだ!どんな情報を握っていて、それがどんな価値を持っていて、それほどまでに厚遇されているかさっぱり分からないし、あり得ない。
愛人の扱いも非現実的だ。今の北朝鮮で、男が地位を利用し勝手に女を慕うのはあっても、女性の方で《祖国を裏切り亡命した男》の何が良くて、何に惚れて、国境を越え危険を冒してまで《南》に行く決断をすぐさましたか、訳が分からない。再会したときの場面など見ていてしらけてしまう。
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敵対する南北の諜報員同士を部屋に閉じこめ、《互いに争いあわせる》という設定は、現実を揶揄して面白いと思ったが、前半の延長線上で話を繋げることができなかったか、映画の出来には残念な思いが残る。
着想は面白く、興味深いのに、できあがった映画は三流のアクション映画みたいだ。
『プンサンケ』-公式サイト