【2013年1月12日】 京都シネマ
映画館の座席に着くと、周りは母親に連れられた“ちびっこダンサー”らしき姿の子どもが多い。狭い会場の座席の半分ほどを占めそうな子供は小学生低学年から入学前の児童がほとんどで、日頃はどこかのバレエ教室に通っているのだろうか。
いつもとはだいぶ違う場内の雰囲気に、《何か違うんじゃないの》と戸惑ったが、他の日に観に行った妻も、《同じような状況だった》と言っているので、この日だけの特別な様子ではなかったようだ。
映画は、『ローザンヌ国際バレエコンクール』と並び、バレエを志す若者の登竜門となる《世界的な大会》であるという(私はこの映画ではじめてこの大会を知ったが)『ユース・アメリカ・グランプリ』の予選から決勝までの様子を追ったドキュメンタリーである。世界各地から5000人以上が予選に参加するというが、映画の中では、下の6件(7名)のケースに焦点をあてレポートしている。
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7人のプロフィールを同映画の『公式サイト』からピックアップしておくと以下のようである。
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コンクールに望むまでの練習風景やトレーニングを見ていると、本人及び周囲のバレエに賭けるエネルギーは並々ならぬものがあり、スクリーンから伝わってくるその迫力はたいしたものである。
その踊る姿は、普段巷で見る練習風景と違い、技術が格段上で、かろやかで躍動的で、何といっても見ていて美しい。ここまでできるのかと驚かされるし感動的でさえある。
この映像を見るだけでもこの映画の価値がありそうだ。
しかしこの映画はそれだけではない。
上の7人(6家族)の出身・国籍を見てもわかるように、今の世界の縮図を見ているようである。
レベッカのように“セレブ”のような恵まれた環境に育った《お姫様》のような高校生もいれば、世界最貧国といわれるアフリカの『シエラレオネ』で生まれ運良くアメリカの養父母に迎えられた《肌の色の黒い》少女もいたり、コロンビアの貧しい村から才能を見出され、両親の期待と将来の夢を賭けて単身アメリカに渡ってきた青年もいる。
参加者のそれぞれ最終目的や動機は違っていても、バレエに対する《情熱》はみな、並々ならぬを持っていて過酷な練習にも耐えている。(フォーガティの弟の方は例外か!)
また、家族や周囲の人の援助の仕方も日本とはちょっと違うように思うし、愛情のかけ方や子どもに対する姿勢や距離は全然違うように映った。
家庭環境も、富の配分も違うし、政治的背景や宗教的環境も違う中で、優勝者を決める基準だけは変わらないという現実。その頂点めざして努力している姿は感動的であるが、同時に何か複雑なものを感じる。
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先日のニュース(2月3日付け)によると、石川県の高校生が『ローザンヌ国際バレエコンクール』で第3位に入賞したという事だ。(ちなみに、昨年の同じコンクールの第40回大会では、同じ高校生の菅井円加さんが第1位になっている。)
この映画館を訪れた“ちびっこ”とその親たちは、親子ともども(というより母親主導なのかもしれないが)将来を夢見ているのかもしれないが、この映画から何を感じ取って帰るのだろか。
『ファースト・ポジション』-公式サイト