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『15時17分、パリ行き』のカタログ表紙
【 2018年3月3日 】 TOHOシネマズ二条
クリント・イーストウッドはやはり映画作りがうまい。2015年に実際に起こった列車内でのテロ事件を見事に映画化したのだが、3人の主人公を事件当時の実際の人物を配役に充てるという大胆なことをやっている。
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映画は、怪しげな人物の足取りから始まる。これはいったい誰なのか。これからいったい何が起きるのか。
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一転、3人の少年時代に戻り、また兵役時代や今の姿を織り交ぜて、いかにして現在に至ったかのエピソードが綴られる。
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偶然といえば偶然である。兵役も済んで、成人した彼ら3人が、ひょんなことからヨーロッパ旅行をすることになる。
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ローマに行き、ヴェネツィアを回り、あるいはミュンヘン、ベルリンも訪れ、成り行きでアムステルダムに集合する。
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それで、「15時17分発のパリ行列車に乗ることになって事件に遭遇する。
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映画の最後で、これまた本物のオランド大統領(当時)が登場して勲章授与の時のスピーチを映し出している。
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これはもう映画というより実在の人物を登場させた《ドキュメンタリー》のようであり、彼らは真に《英雄》である。
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現在87歳というクリント・イーストウッド監督。「マジソン郡の橋」を見た時は、それまでのイメージ=「夕陽のガンマン」に象徴される、《ただカッコいい俳優》だと思っていたのを転換させる大きな衝撃を受けたが、その後も着実に進化し、今なお衰えを知らない。
ここ最近に観た「アメリカン・スナイパー」や「ハドソン川の奇蹟」は、《時の英雄》を描いたものだった。今回のものも、テロから500人以上の乗客を救った《英雄》であることには違いない。
ただここで注意しないといけないのは、3人は確かに【英雄でヒーロー】かもしれないが、手放しで英雄談として受け入れることはできない。
映画の中で、軍隊を志すスペンサーに「自分は人命を救うことに使命を感じている」と言わしめている。確かにそうかもしれないし、そうだからこそ、あの列車内での緊急事態に対応できたのかもしれない。しかしである。
自衛隊が今、大きく変容しようとしているが、自衛官を希望する者の中に「国民の命を守りたい」と真剣に思っている人は少なくないと思う。やむを得ず《生活のため》に入隊する人も多いと思う。そのことと《自衛隊の性格》は全く別の事だ。
アメリカでも、日本に先駆けること十数年、学資ローンで苦しめられる卒業生や、仕事にあふれた失業者の受け入れ先として「軍隊」があったことは堤未果の『貧困大国アメリカ』で明らかにされてきた。徴兵制はなくとも人は集まるが、「志望の動機」と「現実の兵役」のギャップは増々大きくなり、《戦場》から戻った後の「PTSD」の発症や「自殺者」の多発が、それを裏付けている。
《個人の意識や思惑》と《国家・権力が意図していること》とは必ずしも《同じではない》ということ示しているのだ。
『15時17分、パリ行き』-公式サイト
公式サイトの情報が不足している分、カタログの「パンフレット」が充実しているのでちょっと高いけど、お薦めです。
(*印写真の写真は「パンフレット」からとりました。)
【 2018年3月3日 】 TOHOシネマズ二条
クリント・イーストウッドはやはり映画作りがうまい。2015年に実際に起こった列車内でのテロ事件を見事に映画化したのだが、3人の主人公を事件当時の実際の人物を配役に充てるという大胆なことをやっている。
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映画は、怪しげな人物の足取りから始まる。これはいったい誰なのか。これからいったい何が起きるのか。
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偶然といえば偶然である。兵役も済んで、成人した彼ら3人が、ひょんなことからヨーロッパ旅行をすることになる。
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ローマに行き、ヴェネツィアを回り、あるいはミュンヘン、ベルリンも訪れ、成り行きでアムステルダムに集合する。
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それで、「15時17分発のパリ行列車に乗ることになって事件に遭遇する。
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映画の最後で、これまた本物のオランド大統領(当時)が登場して勲章授与の時のスピーチを映し出している。
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これはもう映画というより実在の人物を登場させた《ドキュメンタリー》のようであり、彼らは真に《英雄》である。
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現在87歳というクリント・イーストウッド監督。「マジソン郡の橋」を見た時は、それまでのイメージ=「夕陽のガンマン」に象徴される、《ただカッコいい俳優》だと思っていたのを転換させる大きな衝撃を受けたが、その後も着実に進化し、今なお衰えを知らない。
ここ最近に観た「アメリカン・スナイパー」や「ハドソン川の奇蹟」は、《時の英雄》を描いたものだった。今回のものも、テロから500人以上の乗客を救った《英雄》であることには違いない。
ただここで注意しないといけないのは、3人は確かに【英雄でヒーロー】かもしれないが、手放しで英雄談として受け入れることはできない。
映画の中で、軍隊を志すスペンサーに「自分は人命を救うことに使命を感じている」と言わしめている。確かにそうかもしれないし、そうだからこそ、あの列車内での緊急事態に対応できたのかもしれない。しかしである。
自衛隊が今、大きく変容しようとしているが、自衛官を希望する者の中に「国民の命を守りたい」と真剣に思っている人は少なくないと思う。やむを得ず《生活のため》に入隊する人も多いと思う。そのことと《自衛隊の性格》は全く別の事だ。
アメリカでも、日本に先駆けること十数年、学資ローンで苦しめられる卒業生や、仕事にあふれた失業者の受け入れ先として「軍隊」があったことは堤未果の『貧困大国アメリカ』で明らかにされてきた。徴兵制はなくとも人は集まるが、「志望の動機」と「現実の兵役」のギャップは増々大きくなり、《戦場》から戻った後の「PTSD」の発症や「自殺者」の多発が、それを裏付けている。
《個人の意識や思惑》と《国家・権力が意図していること》とは必ずしも《同じではない》ということ示しているのだ。
『15時17分、パリ行き』-公式サイト
公式サイトの情報が不足している分、カタログの「パンフレット」が充実しているのでちょっと高いけど、お薦めです。
(*印写真の写真は「パンフレット」からとりました。)