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【 2018年2月24日 】 京都シネマ
予備知識なしで映画をみた。これはいったいどこの国のいつ頃の出来事か? ケネディ大統領が画面に映り、「アポロ宇宙計画」が華々しく打ち上げられる様子も続いていたから、アメリカかなと最初は思った。でも話される言葉はドイツ語っぽいし、「いったいどこの国の話?」かなと。
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アポロ11号が月面に着陸したと言われたのは1969年の7月の事だ。その前後頃にデンマークの児童養護施設で起こった事実を描いた映画だった。
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母の病気のためにエリック、エルマーの2人兄弟は施設に入れられることになる。入所の時に「将来の夢は?」と聞かれたことに対し、弟のエルマーが「宇宙飛行士」と答えたとたん平手打ちを加える教師。
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そこは、校長独裁の血も涙もない《強制収容所》のような場所だった。自主性はおろか、物言いも一切認めない。なるべく目立たない《幽霊のような存在》になることだけが生きながらえる術だった。
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入所者同士をたがいに監視させて、生徒からも制裁の暴力を受ける。
年に一度、中央からやってくる監査人は形式的なチェックだけで実態を把握しないまま去ってしまう。それでも、少しは理解してくれる仲間もできてきた。脱出を計画するが実行まで至らない。
教師も皆、校長の肩を持つ。その中で新任の国語の教師だけは、当初は事情が分からず、校長に従っていたが、あまりのひどさに抗議の末に学校を去る。
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エルマーは思い切りコペンハーゲンまで出て、去った先生を訪ね知恵を授かり、一度来たことのあり、その時真摯に仕事に向き合う様子を示していた後継の監査官のいる事務所を訪ねるが、あいにく不在で、失意のまま寮に戻る。
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そして決心し、思い切った行動に出る。
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夕方戻った新しい監査管は先生とエルマーの《訪問》を知り、施設に駆けつけ、ようやく《事件》が明るみに出る。
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「アポロ計画」という歴史的な事件を背景に、地方の深刻な出来事を、少年たちの夢と希望と大人の不正と正義とをファンタジックに上手に組み合わせた、見ごたえのある映画だった。
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デンマークのような福祉の行き届いていると思われている国でも、40年ほど前にこんな事案があったのだ。同じような内容の映画を韓国映画『トガニ・幼き瞳の告発』やノルウェイ映画『孤島の王』でも見た。
《日本ではどうなんだろう》と、ふと考える。
ただはっきりしているのは、ドイツのナチズムでもそうだが、このデンマーク、ノルウェイでもこうした歴史的な負の遺産を、しっかり掘り起こし克服する道を選んで、着実に進んできているということだ。
ここ50年くらいで、諸外国-特にヨーロッパ圏は人々の民主的な権利が大きく変化し前進しているのに、日本では以前と《ちっとも変わり映えしない》ばかりか【後退している】ように思えるのは、どうしてなのだろうかと深く考えてしまう。
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