【 2015年10月8日 記 】
1945年から2015年までの「戦後70年間」を10年ずつの7つの期間に区切り、それぞれの区間で発刊させた「岩波新書」3冊を取り上げ、論評している。
単なる《本の紹介》程度に思って読み始めたが、三者三様の『読みの深さ』、『内容の豊かさ』、『視点の鋭さ』に引きずられて読み込んでしまった。
紹介されている本は各期間3冊ずつで、合計21冊だ。前半期は読んでいないのが多いのは当然として、後半の3~40年でも、半分も読んでいない。
挙がっている本を紹介すると以下のようになる。
1945~1955年 -敗戦と復興-
①『愛国心』 清水幾太郎(岩波新書絶版-筑摩書房版が有る)
②『死の灰』 武谷三男 編(絶版中)
③『台風十三号始末記 (ルポルタージュ)』 杉浦 明平
1955~1965年 -熱い政治と静かな生活-
①『1960年5月19日』 日高 六郎
②『母親のための人生論』 松田 道雄(絶版中)
③『朝鮮―民族・歴史・文化』 金 達寿(絶版中)
1965~1975年 -高度成長の展開-
①『沖縄問題二十年』 中野 好夫、新崎 盛暉(絶版中)
②『高校生』 田代 三良(絶版中)
③『水俣病』 原田 正純
1975~1985年 -経済大国と消費社会-
①『自動車の社会的費用』 宇沢 弘文
②『バナナと日本人』 鶴見 良行
③『家族という関係』 金城 清子(絶版中)
1985~1995年 -バブル・昭和・冷戦の終わり-
①『象徴天皇』 高橋 紘
②『豊かさとは何か』 暉峻 淑子
③『歴史としての社会主義』 和田 春樹(絶版中)
1995~2005年 -失われた10年と「テロとの戦争」-
①『やさしさの精神病理』 大平 健
②『女性労働と企業社会』 熊沢 誠
③『イラクとアメリカ』 酒井啓子
2005~2015年 -模索の時代-
①『反貧困』 湯浅 誠
②『大震災のなかで 私たちは何をすべきか』 内橋 克人
③『ヘイト・スピーチとは何か』 師岡 康子
この70年にいろいろなことが起こり、それに対して人々が苦しみ、悩み、考え、それを様々な立場の知識人が集約し本にして記録し同時代の多くの人に伝え、後世の人に伝達する。そうした『知の営み』に接し驚かされる。その中で自分が意識し、認識しているのはごく一部だ。たまたま今回、これら『21冊』が紹介されただけだが、知らない《世界》はまだ他にもたくさんあるはずだ。好奇心をそそられるとともに、もっと知っておかねばならないことも沢山あると触発される。
紹介された本で、やはり読んでいない本についての《批評》はわかりにくい部分があったり、《こんなに穿り回さなければ読めないのか》と思う部分もある。
しかし、何より悔やまれるのは、大きな歴史の流れの中で、『その時どうしてそういう問題意識を持っていなかったのか。』、『なぜその時、その本を読んでいなかったのか。』という《同時代に生きていながら、その場に居合わせなった無念さ》である。
それはここにある本について、全部が全部でなく、少なくとも数冊は今からでも読んでみたいという刺激を受けた。