いわき市のおやじ日記

K流釣り、K馬、そして麺食いおやじのブログ。
山登り、読書、映画、陶芸、書道など、好きなことはいろいろです。

「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

2024年10月24日 | 映画

母と子の物語です。

他の家庭とちょっとだけ違うのは、子がコーダであること。

コーダというのは、耳が聞こえない両親から生まれた耳が聞こえる子のことです。

子の名前は五十嵐大。実在の人物で、その方が書いたエッセーが原作です。

幼い頃は大好きな母の通訳をするのが当たり前、母と道を歩いている時に、車から母を守ったりするのも当たり前でした。

しかし、大きくなるにしたがって、だんだん母が疎ましくなっていきます。

高校受験に失敗した時には、「俺、こんな家、生まれてきたくなかったよ!」、「全部お母さんのせいだよ!」なんてひどい言葉を投げてしまいます。

父の勧めで東京で働くことになりますが、うまくいかないこともたくさんあります。

そんな中でも母は、食べ物やお金を送り、ひたすら愛情を注ぎ続けます。

本当は大もお母さんが大好きなのに、なかなかそれを表現できません。

終盤、母と仙台で買い物をしたり食事をしたりするシーンから涙が止まりません。

私の周りに観客がいなかったのが幸いでした。

今こうしてブログを書いていても危ないです。

呉美保監督は「ずっと家族を描いていきたい。観終わった時に「そして人生は続く」と受け取ってもらえる映画を作っていきたい」と話しています。いいこと言うなぁ、他の作品も見てみようと思います。

主演の吉沢亮さん、忍足亜希子さん(この方はろうの女優です)がとても自然で、実の母子のようでした。

大がろうの方を助けようと思ってしたことに対して、ろうの方が「私たちのできることを奪わないで」って諭されるシーン、考えさせられました。最近の日本映画は印象に残る作品が多いです。

映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』公式サイト

映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』公式サイト

監督:呉美保 『そこのみて光輝く』 × 主演:吉沢亮 2024年全国ロードショー

映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』公式サイト

 
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ぼくのお日さま

2024年10月21日 | 映画

雪が降り始め、雪が解けるまでの小さな恋たちの物語。

いい映画でした。カンヌで8分間のスタンディングオベーションだったそうです。映画評価サイトの評価も高いです。

 

小学6年の少年たくや、中学1年の少女さくら、元プロのフィギュアスケーターで現コーチの荒川、3人の話です。

たくやは内気で運動音痴。夏は野球、冬はアイスホッケーの練習をしますが、どちらも苦手です。

ふと目にしたのがフィギュアスケートの練習をするさくら。

たくやはさくらに一目ぼれしてしまいます。このシーン、マーク・レスターがトレーシー・ハイドを見つめているみたいでした。

さくらは荒川にひそかな思いを寄せていたと思います。

たくやは熱心にフィギュアスケートを練習し、荒川はそれをサポートし、やがてたくやとさくらのアイスダンスの練習が始まります。

二人の息が徐々に合い始めもう少しでバッチテスト、というところで3人の関係がギクシャクしてしまいます。

詳しく書きませんが、それぞれが負の感情を持つことになってしまいます。

余韻が思いっきり残ったラスト。切ない

さくらを演じた中西希亜良さんは12歳。川口春奈さんに似ています。お父さんはフランス人で、日本語、英語、フランス語が話せるそうです。初出演でこの演技、期待の新人ですね。

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「お梅は呪いたい」

2024年10月02日 | 

お梅は500年前(戦国時代)に、大名一族を呪い殺した人形です。

木箱の中に閉じ込められていましたが、古民家の解体作業中に木箱の外に出され、眠りから覚めます。

お梅の得意技は瘴気(しょうき)と呼ばれる毒ガスと、人間の心の中から負の感情を読み取り、それを大きく増幅させる能力。

この二つの技を使ってお梅は現代社会に戸惑いながら、人を呪い殺そうとします。

フリーターでぱっとしないユーチューバー、失恋して自暴自棄の女性、引きこもりの若者などに呪いの技を仕掛けますが、ことごとくそれらの人たちは幸せになっていくという、お梅にとっては痛恨の極みが繰り返されます。

章ごとにゆるい繋がりがあり、最終章で全ての話の登場人物が出てきて伏線回収となります。

全然怖い話ではありません。むしろ笑いと涙の話です。帯に「呪われ人生喜劇」とありました。ちょっとした社会に対する皮肉も楽しめます。

ラジオ福島と福島民報で紹介された、県内の本屋さんの「今週のいちおし」で取り上げられていました。

私もお勧めしたいと思います。そしてお梅、うちに来てほしいです。

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栗ジャムを作ってみました

2024年09月28日 | 料理

今月25日に好間保育所の子ども達と栗拾いに行きました。

3年ぶりの豊作らしく、大きな実がたくさん生っていました。

1kgぐらい採りました。

去年は栗ご飯を作りましたが、剥くのに苦労したので楽できないかと思い、今年はジャムにしました。

よく洗って

40分茹で、半分に割って実をかき出しました。540gになりました。

砂糖150g(栗の約30%)、塩3つまみ、水140ccを入れ、

木べらでかき混ぜながら弱火で9分煮たら出来上がりです。

縄文人ってこんなことをしてたんだろうな、と思いながら作りました。

栗ご飯より簡単です。少し砂糖を減らしても良かったかもしれません。

次回に生かそうと思います。

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「箱男」

2024年09月27日 | 映画

安部公房は好きな作家で、10代から20代にかけていろいろ読みました。

(「密会」は単行本もあったはずですがすぐに探せませんでした)

「箱男」を最初に読んだのは20歳ぐらいの時だったと思います。

登場人物は多くないですが、その関係が複雑で、一体この部分は誰が一人称で書いてるのか、この部分は誰かの妄想なのかリアルなのか、などストーリーもテーマもほとんど理解できず、私には歯がたたない小説だと思いました。

 

映画「箱男」が封切られるというので、45年ぶりに再読しました。

少し内容を理解できたものの、頭の中は混乱し、曇りガラスで世界を見るようなぼんやり感があり、ぶつかっていったら思い切り跳ね返された気分です。

この小説は何度も読み返さないと理解するのは難しそうです。そもそも理解不能の不条理小説だから、理解しようとしないのがよいのかもしれません。

映画を観たらちょっとはスッキリするかなと思いましたが、まだまだ不明瞭な部分が多すぎてコメントが難しいです。

4日前に観たのですが、平日の昼間とはいえ観客は4人。私と同世代と思われる男性だけでした。

 

映画のサイトから引用します。

完全な孤立、完全な孤独を得て、社会の螺旋から外れた「本物」の存在。ダンボールを頭からすっぽりと被り、街中に存在し、一方的に世界を覗き見る『箱男』。

カメラマンである“わたし”(永瀬正敏)は、偶然目にした箱男に心を奪われ、自らもダンボールをかぶり、遂に箱男としての一歩を踏み出すことに。

しかし、本物の『箱男』になる道は険しく、数々の試練と危険が襲いかかる。

存在を乗っ取ろうとするニセ箱男(浅野忠信)、完全犯罪に利用しようと企む軍医(佐藤浩市)、 “わたし”を誘惑する謎の女・葉子(白本彩奈)......。

果たして“わたし”は本物の『箱男』になれるのか。そして、犯罪を目論むニセモノたちとの戦いの行方はー!?

 

箱男はインターネット社会にたくさん存在する、匿名で、自分は見られることを拒み、他者を一方的に見る(そして批判する)者たちに近いと思いました。

原作にこんな文章があります。

一度でも、匿名の市民だけのための、匿名の都市 ーーー 扉という扉が、誰のためにもへだてなく開かれていて、他人どうしだろうと、特に身構える必要はなく、逆立ちして歩こうと、道端で眠り込もうと、咎められず、人々を呼び止めるのに、特別な許可はいらず、歌自慢なら、いくら勝手に歌いかけようと自由だし、それが済めば、いつでも好きな時に、無名の人混みに紛れ込むことが出来る、そんな街 ーーー のことを、一度でもいいから思い描き、夢見たことのあるものだったら、他人事ではない、つねにA(おやじ注:Aは箱男になってしまった者)と同じ危機にさられせているはずなのだ。

これを50年以上前に書いた安部公房はやはりすごいと思います。

5年半かけて300枚の完成作に対し、書き潰した量は3,000枚を超えたそうですから、作者にとってみれば「そんなに簡単に分かってたまるか」ということなのかもしれません。

今夜は「映画を語る会」で「箱男」をテーマに語り合います。どんな感想が出るか楽しみではあります。

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