いわき市のおやじ日記

K流釣り、K馬、そして麺食いおやじのブログ。
山登り、読書、映画、陶芸、書道など、好きなことはいろいろです。

「真夜中のマリオネット」

2024年08月25日 | 

暑い日はミステリー、サスペンス(両者の違いがよくわからない)、そしてホラーなんかで背筋を凍らせるのもいいですね。

知念実希人さんの小説は初めて読みました。

内容については触れないほうがいいです。当然ですが情報入れずに読んだほうが楽しめます。

 

実写化するとすれば、主役の女医さんは戸田恵梨香さん、端正な若者(石田涼介)は山田涼介さんを想像しながら読んでいました。

ラストの1ページでええっ!となります。たまにはいいですね、こういうの。

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「N」

2024年08月15日 | 

 

冒頭に「本書は六つの章で構成されていますが、読む順番は自由です。はじめに、それぞれの冒頭部分だけが書かれています。読みたいと思った章を選び、そのページに移動してください」

とありました。

6!通り(720通り)の物語ができるという実験的な小説です。

各章の物理的なつながりをなくすため、一章おきに上下逆転された状態で印刷されています。

私は2→5→4→3→1→6章の順に読みました。

各章の登場人物(人間だけでなく動物も)が他の章にも出てきますので、物語としての繋がりはあります。このあたりは、伊坂幸太郎さんの小説に近いかもしれません。

ただ読む順番によって、事実を知ってからその背景を知るのか、あるいはその逆なのかに変わりますので、全く違った印象になります。

今度は逆の順番に読んでみようか、なんて思ったりします。

海上に現れる光の花が繰り返し出てきます。滅多に見ることのできない光が存在するかもしれない、この小説を読んで、生きる希望を与えてくれる光を感じ取ってほしい、そんな作者の願いがあるような気がしました。

 

印象に残った文章です。

 

何もない人生のほうが ----- つらくて悲しいことが起きない人生のほうが、特別なのだということを。 「落ちない魔球と鳥」より

 

好きなことを仕事にできるのは幸せだと、誰もが言う。でも、何かを好きであるほど、人はその世界で夢を見る。夢と現実が一致することなんてなく、大抵は夢のほうが綺麗で大きいから、両者の差がそのまま落胆に変わる。 「飛べない雄蜂の嘘」より

 

海で溺れそうになったとき、自分の手を自分で引っ張っても意味がないって、パパは言ったでしょ。誰かに引っ張ってもらわないと駄目だって。 「消えないガラスの星」より

 

「ほとんどの動物は、仲間内で殺し合ったりなんてしねえのに。手加減の仕方とか、降参の合図とか、お互いわかってるから」 「眠らない刑事と犬」より

 

「不満を意識する生き物なんて、人間だけだよな」 「眠らない刑事と犬」より

 

教え子に心をひらかせるには人格というものが必要だなんて、知らなかったのだ。 「名のない毒液と花」より

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「塞王の楯」

2024年08月09日 | 

 

直木賞受賞作だけあってすごく面白いエンタメ戦国小説でした。

表舞台に出ない石垣職人が主人公です。

読んでいて「村上海賊の娘」(和田竜)を思い出しました。こちらも直木賞受賞作で、脚光を浴びることのない瀬戸内海の海賊の娘が主人公でした。

どちらも歴史にあまり残っていないからか、作者のイマジネーションで想像を膨らませることができ、話の展開がスリリングでどんどんのめり込んでしまいます。

 

「塞王の楯」は石垣職人と鉄砲造りが、関ヶ原直前の大津城の戦いで火花を散らす話です。

城を攻める鉄砲衆を率いるのは国友衆の彦九郎。

対して城を守るため石垣を構築するのは穴太衆の飛田匡介。

それぞれ当時の日本では最高の技術を誇り、至高の矛vs最強の楯という構図の戦いになります。

一進一退、どちらが勝つか、どちらが正義か、著名な戦国武将とは別に、戦いを繰り広げる技術者集団の駆け引きが実に面白かったです。

大津城主の京極高次、妻の初、初の侍女夏帆などのキャラも魅力的で、700ページも長く感じませんでした。

 

石垣の積み方にも興味が湧いてきました。お城廻りをするのが楽しみです。

 

印象に残った文章をいくつか。

 

 百年の平和というものは、人を弛ませるには十分だった。現実とは思えないのか、初め一乗谷の民はどこか夢の話を聞くような顔をしていた。しかし遠くから鬨の声や銃声が耳に届く段となり、民もようやく夢から覚めたように慌ただしく動き始めた。家財を纏める者、着の身着のまま逃げ出す者、まだその段になっても、
 ーお城があるから心配ない。
と、余裕を見せていた者も少なからずいたのである。

 

「人は元来、自ら死ぬようにはできていない。生きろ。己の命を守るのだ」

 

「それ(おやじ注:一日で十万、百万が死ぬ砲)を使うほど人は馬鹿じゃねえ。泰平を生み出すのは、決して使われない砲よ」

 

人を守るには強さがいるが、その源流には優しさがある。

 

人はそれぞれ何かしら才を持って生まれ落ちる。だが人の生涯の中で、己の才が何かをいうことに気付くものは少ないし、たとえ気付いたとしてもそれを活かさぬまま一生を終えるものが大半である

 

 

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「夜が明ける」

2024年07月26日 | 

重くて暗い内容でした。

手首を切るところなどは、冷静に読むことができませんでした。

「夜が明ける」という題なので、最後は明るく終わるのだろうと思いながら読んでいましたが、微妙な暗さを残したまま終わりました。

 

15歳(高校生)の時、「俺」はアキ(男性)と出会い、親友になります。 アキは長身で暗い顔つきで一見強そうですが、吃音で母親にネグレクトされていました

アキは高卒で劇団に入り、「俺」は大学卒業後、テレビ制作会社に就職します 。

しかし、アキは慕っていた劇団の主宰から「怖い」と言われてしまいます。「俺」はADとして寝る時間もないような状況で働きますが、ディレクターから罵られたり、タレントからハラスメントを受けたり、理不尽で超ブラックです。

二人とも少しずつ心身を壊していき、貧困の中でなんとか生活を続けますが…。

著者は小泉今日子さんとの対談の中で「政治が国民にどう向き合うべきかということを書いたつもりです」と話していらっしゃいました。

ヤングケアラー、貧困など、普段あまり意識したことがありませんでしたが、この小説の「俺」やアキのような若者はいるだろうし、日本にも貧困はあります。

小泉さんの言葉を借りますが、自分が何もしなくても国や経済は成長するのが当たり前で、政治や日本という国のありようについて深く考えなくても生きていける、と思っていました。

でも、苦しんでいる若者がいるということにもっと目を向けなければいけないと強く思い知らされました。

 

以下、印象に残った文章をいくつか。

 

世界に目を向けてみろよ。どれだけの不幸がある?飢えと貧困に苦しんでる子供達。体を売らなければならない女達。戦争で命を落とす男達。俺たちは、そんな人間達の不幸の上にあぐらをかいているんだ。最近の若い奴は甘いよ。仕事がしんどければすぐ辞める。上司にしごかれたらすぐ辞める。それは贅沢だよ。仕事を選んでる時点で、そいつらは恵まれてるんだ。無事に学校に行って、命が脅かされない状態で勉強が出来るだけで、恵まれてるんだ。

 

この世界には、誰にも知られていない不幸がある。
自らに与えられた環境に疑問を持つことが出来ず、ただただ現実を受け入れるしかなく、慢性的な、もはやその怒りで自分自身を殺してしまいかねないほどの怒りを抱えながら、生きていくしかない存在。

 

日本礼賛番組が増えたのも、彼らの存在が大きいと言われている。高度経済成長期を経験した、つまり「頑張れば必ず上向きになる」ことを信じ込まされてきた彼らは、日本の経済がどう頑張っても傾き続けていること、日本の「国力」が弱まっていることを受け入れられない。だからか、日本の職人技や技術が世界で称賛されているのをみると安心する。世界において日本が「さすが」と言われているのを見たいのだ。

 

でもいつからかな。恨むことが負けだと思うようになった。恨んでたら、恨んでる側が弱いんだって。
強い人は恨まないんでしょう?弱いから、弱さの中にいるから恨むんでしょう?
誰かの、世界の優しさを信じられないのは、その人が弱いからなんでしょう?

 

500ページを超える長編でしたが、わりと早く読み終えました。重いですが、読みやすい小説でした。

次は夏らしく明るい小説を読もうと思います。

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ビブリオバトル

2023年10月27日 | 

先月末、ビブリオバトルというものに初めて観戦者として参加しました。

いわき市文化センターで行われた「第9回ビブリオバトル福島県大会浜通り地区予選会」には、17名の高校生が発表者として登壇しました。

原稿を見ずに、大勢の観戦者の前で5分間話し続けるのは緊張しただろうし、何度も練習したことと思います。

本の感想に優劣をつけるのはなんだかなぁとも思いましたが、単純にどの本が一番読みたくなったかだけを考えて投票しました。

2分間の質問タイムでも発表者は誠実に答えていて、好感が持てました。

たぶん一番多く質問したのは私だと思います。

予選、決勝戦を経て、優勝と準優勝は私の一押しと二押しに決まり、優勝したのは「バールの正しい使い方」を発表した松本さん(新聞発表されているので名前を出しました)。

面白そうだったので読んでみました。

「嘘」をテーマにしたミステリーです。

主な登場人物が小学生で、暗さはなく、むしろ優しさや愛しさに溢れる物語でした。

そーか、バールってそういうことだったのか、って読み終わった時に理解できます。

 

総務省統計によると、本の出版数は文学だけで年間約13,000冊。1ヶ月に1,000冊以上です。

この中から面白そうな本を選ぶのはなかなか難しいので新聞の書評などを参考にしていますが、これからはビブリオバトルもいいなと思いました。

 

ところで優勝した松本さんを含め、発表者17名中3名は四倉高校生でした。

かつてこの学校には20〜30回ほど訪問しましたが、階段の踊り場にある掲示板には図書室にある本の案内があって、私も立ち止まって読んだりしていました。

松本さんも「バールの正しい使い方」を手に取ったきっかけは「お勧めの本だったから」ということでした。

この学校の司書の方々の努力が優勝に繋がったのかもしれません。

令和8年には平商業と統合して閉校になってしまいますが、この伝統は残ってほしいと思います。

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