再試合
小川洋子さんの短編「再試合」を読んだ。
夏休み (角川文庫) | |
千野帽子 編 | |
KADOKAWA/角川書店 |
レフトの「彼」を見るのが目的で「私」は甲子園に応援に来る。
勝ち進んで決勝戦。 両チームとも点を挙げられないまま、翌日再試合になる。
しかし点が入らず、次の日も再試合。そして次の日も。
観客は「両方優勝にしてしまえばいいじゃないか」とか「いっそのこと、くじ引きかじゃんけんにすればいいのよ」なんて無責任なことを言い始める。
何日再試合をしても決着はつかない。
そのうち町に飾られた横断幕、垂れ幕、のぼり旗の類は皆ぼろ切れになる。
それらの製造で繁栄した染物屋は倒産する。
祝電の山はゴミに出される。
ふと気づくと自分は年老いており、歯が1本しか残っていない。
不思議な時間の感覚であった。
今日行われた全国高校軟式野球選手権の準決勝は、延長50回を制して中京が崇徳を制した。
4日間、0が続いたのもすごいが、両チームの投手が一人で投げ抜いたのもすごい。
両チームの健闘を称えたい。
今日決着がつかなかったら、抽選で勝利チームを決めることになっていたらしい。
小説「再試合」の中に、「野球はアウトを取り続けなければいけない。時間で終わりを決めることは許されていない。野球は終わらない運命を背負ったスポーツなのだ。」とあった。
夏の終わり、「終わらない時間」を感じさせる、夢のような小説を読むとなんだか切ない。