いわき市のおやじ日記

K流釣り、K馬、そして麺食いおやじのブログ。
山登り、読書、映画、陶芸、書道など、好きなことはいろいろです。

暢気眼鏡 尾崎一雄

2021年01月04日 | 

小説を書けない小説家と、暢気な妻の短編集。

芥川賞受賞作。佐佐木茂索の選評に「書けない作家が書けないことを書いている作品」とあるが、その通りだと思う。

短編のいくつかは「芳兵衛もの」と言われ、若妻である芳枝に関わるもの。

これがまずまず面白い。

芳枝は貧乏なのに陽気で暢気で素っ頓狂で奇天烈。そして極端に臆病。

「臆病であるばかりか僕の眼からは相当に思慮たらぬ方で、人前に云わでもことを云ってのけ、気に入らぬことあれば誰の前でも文字通り頬をふくらし、嬉しいと腹の底をそのまま写したほどの笑顔をする」

とある。

喫茶店で教師に喧嘩を売る尾崎一雄(「ヒョトコ」のモデルはたぶん作者本人だろう)とは友達になりたくないが、芳枝となら友達になりたい。

地味だが、噛むほどに味が出る、そんな小説でした。

コメント
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