昭和14年の作品だから第二次世界大戦が勃発した頃です。
浅草は山手あたりと比べると格下に見られていて、貧しい生活に加え、勉学においてもレベルが低いと思われていたようです。
もともとあさくさというところは、東京の中でも一番いけないことが、一番多く行われているところのように思われているでしょ。不良やたかり、万引き、人殺し、そんなものがふんだんにあるところのように思われているの
なんて記述もあります。
浅草小学校6年の担任江礼と子供たちのふれあいの物語。
「星子の章」、「桂太の章」、「律子と欽弥の章」の3部作からなります。
星子は素行が悪いいわゆる問題児。不良仲間と遊んで命が危なくなります。
桂太の家は母子家庭。貧困だし病気もあって大変苦しい生活をしていますが、母親はがんとして他人の親切を受け入れません。
律子と欽弥は互いに惹かれ合いますが、親も先生も二人をが仲良くなるのを阻止しようとします。
先生をしていれば今でもあるだろう問題です。江礼先生は星子、桂太、律子に対して異常とも思える愛情を注ぎますが、それが必ずしも吉とはなりません。
作者は実際に浅草小学校の先生だったので、自分の経験が元になっているのでしょう。
私もかつて教鞭をとっていたし、母が小学校の教師だったので主人公の心の動きがよくわかって、なんとなく昔を思い出したりして、どちらかというと苦しみながら読み終えました。