先日、川棚町の石木ダム建設予定地の川原(こうばる)地区に行ってきました。
私の住んでいるところは虚空蔵山(西海市)のふもと。川原も場所は違えど同じ虚空蔵山(川棚町)のふもと。以前から関心はありました。そして、長崎県と佐世保市がダムの底に沈めようとしているのはいったいどんなところなのか、この目でみてみたいと思ったからです。
初めての川原は、清流石木川の両側に上流の木場地区まで棚田が続き、山々に囲まれた唱歌「ふるさと」の歌詞さながらの、のどかで、自然ゆたかなところでした。
いったい誰が、ここに住む64戸の家を追い出し、40ヘクタールをこえる田畑をつぶし、ダムを造ろうなどととんでもないことを思いついたのかとても腹が立ちました。
計画が持ち上がると当然、地域住民は激しく反対しました。。金力と権力をかざした県当局の執拗な切りくずしを受けながらも、現在、地権者の13戸、70人がふるさとをまもろうとダム建設反対を貫き、計画から約半世紀近くたった今でもダムの建設を許していません。
とくに1982年には、県は「土地収用法」による強制測量を、400名の機動隊を動員して行いました。当時の映像には、小さい子供達から、リヤカーに乗った老人達まで、必死にダム建設反対、機動隊帰れの声を上げ、それをごぼう抜きにする機動隊員の姿が映し出されていて思わず怒りと涙があふれてきます。
川原地区の入り口に立てられている団結小屋です。小屋の前の案山子がユーモラスです。中に人がいないときは私たちがちゃんと見張ってるわよ!ということでしょうか。↓
小屋の端の方にはこんな立て看板が貼り付けてありました。↓
「収用法」は伝家の宝刀ではなく”鉈(なた)”である。返り血も浴びる。何回も振り回さねばとどめはさせぬ。またそれですべてが終わるわけではない。これからが苦しみの始まりである。
すさまじい覚悟が伝わってきます。
そして地域のあちこちに、ダム建設反対の立て看板や壁書きがありました。
手前の耕作してない田んぼは用地買収に応じて出て行った人のものだったでしょうか。広くて道がかりのよい田んぼなのに遊ばせるなんてもったいないな~ ↓
異様な雰囲気を感じましたが、川原の人たちは早くこんな看板は取り外したいはずです。ダムが中止になり、反対する必要がなくなったら、看板を撤去したあとに花の種を蒔くそうです。
昨日は佐世保市で「ほんとに必要?石木ダムはいらない全国集会」が開催され、私も行ってきました。会場は600席ぐらいのところと聞いていましたが、ほぼ満席。やさいの会の会員の方も何人か見かけました。
講師の二人の専門家は、石木ダムが利水、治水の面からも全く必要のないことを詳しく、わかりやすく説明してくれました。参加した誰もが納得したでしょう。
佐世保市の水需要は、計画当初の予測とは反比例して減少し、さらに人口の減少や、節水器機の改良などで年々減ってきており、今後これが増加に転じるとはまず考えられません。佐世保市の景気が急激に良くなり、爆発的に人口が増加しない限り無理です。市の 予測では6年後には1日の水道配水量が今より4万トン(現在7万7000トン)も必要になる計画になっていますが、誰が見ても実績からかけ離れた過大な予測であることは明らかです。
4万トン必要としなければ石木ダムを造る論拠がなくなるだけの話で、数年すれば事実でばれてしまうウソを役人はよく出してくるものだと思います。要するに何が何でもダムを造りたいだけなのです。
かけがえのない自然やそこに住む人々の暮らしをダムの底に沈めてまで水を確保しなければならない必要性は全くありません。
地権者の皆さんのダム建設反対の意思は強固です。もはや解決の方法は二つしかありません。白紙撤回か土地収用法で地権者の土地と財産を「強奪」することです。中村知事は知事選挙の際、アンケートに答えて「強制収容はしない」と明言してます。
たとえ強制収容をしようとしても今の時代に暴力的な手法は通用しません。あくまでも住民の納得と合意が大前提です。 強権政治の末路は哀れです。機動隊を導入したりしたら、今ではその映像は瞬時に日本中、世界中に配信され、県も市も厳しく糾弾されるでしょう。前回強制測量した時も世論の厳しい批判を浴びましたが、それ以上の反発を買うことは確実です。現実には白紙撤回しか残された道はないのです。
本気で佐世保市の水事情を改善しようと考えるなら、100%建設の見通しのない石木ダムは早く諦めて他の方法を探すべきでしょう。いつまでも固執するならほんとうに税金と時間と労力のムダです。
集会で配られた「石木ダム絶対反対同盟」と「ダムからふるさとをまもる会」の連名によるメッセージの最後の部分をを紹介します。
「・・・多くの佐世保市民は私たちを犠牲にしてまで石木ダムは必要ないと、思っておられるはず。
私たちは、石木ダム建設計画が持ち上がってから半世紀あまりこの問題とともに人生を歩いてきた。石木ダム建設計画によって人生が犠牲になったと言っても過言ではない。数年に一度の給水制限での苦労とは比べ物にならない。本当に水が必要というなら石木ダムに頼らず佐世保市は佐世保で解決する方法があるはず。
最後に、私達は石木ダムの不必要性を訴え石木ダム建設絶対反対を訴えてきた、今この機会に長崎県は石木ダム建設の再・再検証を行い石木ダム建設計画の白紙撤回をするべきだ。私たちの気持ちを踏みにじり、私たちの同意がないままダム建設を強行するならば、私たちは豊かな自然を子・孫へ残すため、命をかけて阻止する覚悟はできています。 しかし、そうさせない為に「石木ダムは不必要」と言う声を多くの佐世保市民・長崎県民の中から上げて欲しいのです。そして一日も早く長崎県に石木ダム建設を白紙撤回するよう、訴えてほしい、それが私たちの願いです。ご協力をよろしくお願いします。」
長崎県知事、佐世保市長に訴えたい。
「もう終わりにしたらどうですか、これ以上川原の人たちを苦しめるのは」
西海町の虚空象山の麓、私の畑から見える川棚町の虚空蔵山です。九州のマッターホルンと呼ばれている川棚の虚空象山は遙か遠くにりりしくそびえています。
その麓、川原から一日も早く、ダム反対の看板が消え、そのあとにきれいな花が咲き乱れ、人々に平穏な日々が訪れることを切に願っています。