僕と猫のブルーズ

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百万円と苦虫女

2010年03月24日 | Art・本・映画
先週ケーブルTVで蒼井優主演の映画「百万円と苦虫女」が放送された。
映画は未見だったが、原田郁子歌う主題歌「やわらかくてきもちいい風」の
CDは持ってたので録画して見た。

就職浪人しているフリーター鈴子はひょんな事から「前科者」になってしまう。
故郷に居づらくなり家を飛び出す。
鈴子は百万円が貯まったら知らない土地へ移って暮らす生活をすることを決意。

海の家、桃畑、ホームセンター。色んな街に行ってはアルバイト暮らし。
「自分を知らない人のいる場所で暮らしたい」
「自分探しなんかしたくない。むしろ自分をなくしたい」
そう思って地味に暮らそうとする鈴子。
でも周囲は若くて可愛い女性を放っておく訳が無く様々な人間関係に巻込まれる。

ともかく鈴子のキャラが秀逸。世の中を醒めて見てやさぐれてる。
「友達居ないから携帯は要らない」「迷惑かけてない人に恥ずかしがる必要ない」
キモチ善い位にサバサバしてる。
でも・・他人が親しげに話すと何か頼むと困った顔をして「つくり笑い」をする。

なんか昔の自分思い出したな。ずっと一人でいたかった。
他人がうっとおしかったし、わずらわしかった。
他人と付き合うのは面倒だしホンネなんて見せたくもない。話すこともない。
そもそも他人がオレに興味持ってるわけがない。
人間が全部滅亡して世界に一人きりになっても生きていける、そう思ってた。
ずっと一人きりで生きていく。そして一人きりで消える。
そう思ってたな。そう思い込もうとしてた。

だけど結局は強がってただけ。内心は人とのつながりを求めてたんだろう。
一人でいようと思ったのは拒絶が怖かったから。いずれ来る断絶に怯えてたから。
最初は上手く付き合えててもそのうち本性がバレたら絶対離れていく、嫌われる。
なら、最初から付き合わないほうが善い。

鈴子も他人との関係が深まりそうになると別の場所に移る。
そして・・ある地方都市のホームセンターで働き出して「彼氏」が出来る。
鈴子同様不器用でシャイな青年。
この青年を森山未来が実にみずみずしく演じてる。

でも・・その青年とも行き違いが生じ、鈴子はまた旅立つ。
自分が今迄「逃げていた」ことを自覚し「次の街では逃げない」と決めて。
青年は鈴子を追い掛けるが・・・最後会えないままいきなり物語は終わる。

この終わり方は・・ホントびっくりした。
当然最後は彼氏とやり直すハッピーエンドが用意されてたと思ったから。
でも・・違った。そんな安易な最後はなかった。
代わりに・・・
ラストシーン鈴子は初めて笑う。ココロの底から。堂々と胸をはって。

鈴子はあのあと、どうしたんだろう?まだ旅を続けたんだろうか?
それとも弟が待つ故郷に戻ったんだろうか?
エンディングがハッキリしない分、色々考えてしまう。
なんともスッキリしない・・・
でも・・善い映画なんだろうな。ウン。

ボクのほうは昔ほど他人に対して拒否反応は無くなった。
元春を通じて知り合った友人はもう10年来の付き合い。
一緒にいて楽しい。この人たちの前では何も飾らない。隠さない。
腹の底から笑ってる。
その一人の嫁と付き合って結婚して・・・。
毎日げらげら笑ってる。

一人で生きてた頃・・こんな思い切り笑ったこと無かったな。
人と付き合いだして・・・ホントの感情が芽生えてきたのかな?

未だに他人との付き合いに恐怖感や怯えはある。
でも・・・なんとかなる。そういうキモチもある。
そして・・こういう怯えを持って生きてるのはオレだけじゃない。

この映画・・・そういう生きることに不器用な人たちに向かって
ホンのちょっとだけ背中を押してくれるような作品だと思う。
ウン・・・おススメです。

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