「せんだい」はあぶくま型護衛艦です。地方隊の中核を担うべく設計された護衛艦。
冷戦の末期に計画されたもので、当初はちくご型に相当する数(ちくご型は11隻)の配備を構想されていましたが、冷戦終結による緊張緩和によって6隻の建造で終了。以後、DDはつゆき型が地方隊へ配備されたため、DEの新造艦は計画されていません。なお、艦名は川の名前から取られています。
2008年3月の海上自衛隊部隊組織改編に伴い、地方隊所属から護衛艦隊所属になり現在も第一線で活躍しています。
装備 は「いしかり」及びゆうばり型では重量軽減のため採用されなかったアスロック対潜ミサイルを搭載し、さらにちくご型には無かったハープーン艦対艦ミサイルを装備しており、DEとしては初めてバランスの取れた対潜・対水上能力を備えました。
また、海軍戦術情報システムに対応したほか、ECM機能をもつ電子戦装置を搭載するなど、電子兵装に関しても、護衛艦隊所属艦(当時)と遜色のないレベルまで強化されている。
対潜作戦に重要な対潜ヘリコプターの搭載能力はないものの、後部甲板にヴァートレップ(VERTREP: ヘリコプターによる補給)に対応できるアプローチスペースが備えられています。
ちくご型と同様、アスロックの予備弾は搭載されていないので、搭載弾は、8連装発射機に装填された即応弾8発のみとなりまする。また、発射機が艦の中央にある煙突2本の間に搭載されていることから、前後に発射出来ないことを疑問視する向きもある。ただし、ちくご型なども同様の配置であるが、運用上の不具合は報告されていません。なお、ソナーとしてはOQS-8を船首装備として搭載するが、OQS-8はアメリカ製のDE-1167におおむね匹敵するものとされています。
日本近海での使用を前提としているため、対空兵装は、前甲板の76ミリ速射砲と後甲板の高性能20mm機関砲(CIWS)のみであり、対空戦闘能力は限定的なものでしかありません。76ミリ砲と艦橋の間にRAM近接防空ミサイルの搭載スペースが用意されているが、RAM装備の改装は現在のところ予定にはなく、空地となっています。
乗組員の居住環境向上をはかるため、2段ベッドを採用した最初の護衛艦です。
また外舷には傾斜がかけられており、海上自衛隊の護衛艦としては初めて、ステルス性を意識した設計が行われています。ただし上部構造物の側壁は垂直なままであり、中途半端な設計であるとも言えます。
艦内生活は、航海中は3時間3交代、6時間2交代、または交代なし総員配置による哨戒配備、停泊中は、昼間の8時間勤務が標準です。
艦内飲酒について、イギリス海軍を手本として設立された日本海軍では「紳士の嗜み」として許されていたのに対し、海上自衛隊では、禁酒法を制定したアメリカ海軍の流れを汲み、一切許可されず、艦内で飲酒した者に対する厳重な罰則規定も存在します。
勤務時間などは「海上自衛官の勤務時間及び休暇に関する達」(昭和38年2月18日海上自衛隊達第15号)などで規定されており、夏期(4月1日から9月30日まで)の平日は、「総員起こし」と呼ばれる午前6時起床、体操後に朝食を摂り、午前8時から11時45分と午後1時から午後4時30分まで課業を行います。午後7時30分に巡検が行われ、午後10時消灯。自衛艦旗は、停泊中は午前8時の課業開始時に掲揚され、日没と同時に下ろされるが、航行中は常時掲揚しています。曹士のまとめ役として先任伍長も置かれています。
停泊中の起床
午前6時(10月から3月の停泊時は午前6時半)
停泊中の消灯
午後10時
食事
1日3回。かつては夜食もあり1日4回だったが、現在は、行事訓練等の所要に応じ不定期に夜食が供されます。長期にわたる遠洋航海途上等において、乗員の曜日感覚を維持する目的で、毎週金曜日には海軍カレーが出される。かつては土曜日に提供されていた時代もあったが、公務員の週休2日制(停泊中の場合を基準とする)が導入されてからは、休みの前日を知らせる昼食という意味も込められています。
調理
熱源は電気又は蒸気であり、ガスは使用しない。米を研ぐ際は海水を使用し、炊くときに真水を使用していたが、現在は全て真水を用いる洗米機を使用しています。
ゴミ・汚水
海洋汚染防止法の適用を受ける。ゴミについては基本的に寄港地で処理し、残飯はディスポーザーにかける。汚水は、法に基づいて処理し、放流する。
真水管制
浴室
造水能力が向上し、かつてほど厳しくはなくなったが、真水は貴重品とされる。航海中の入浴は海水を使用し、風呂上がりのシャワーのみ真水の湯とすることもある。航海中の洗濯を制限している艦もある。
娯楽
乗員居住区及び食堂に、テレビが1台以上設置されているが、陸岸から離れるとテレビの地上波は届かない。衛星放送の輻射も日本列島に合わせてあり、やはり遠方になると映らない。乗員は私物や官給品の書籍による読書や自主学習、ビデオ、トランプゲームなどで自由時間を過ごしている。コンセントの電圧は一般家庭より高く、家電製品や業務でノートパソコンを使用する場合、変圧装置の使用が必要とされる。
艦内空間:居住スペース
むらさめ型等の新鋭艦は、従来艦より大型化されたために居住空間が広くなり、生活環境は改善されています。
家庭等との通信
カード式公衆電話が設置されているが、状況によって使用を制限されることもあります。停泊中であっても、金属で覆われた艦内に携帯電話の電波が届く箇所は限られており、秘密保全の関係で持ち込むことができない区画もあります。郵便は、基地業務隊等の陸上部隊を経由する。たとえ長期の航海であっても、艦の経理員による手続きが行われれば、寄港地に転送することも可能。特に遠洋航海などにおいては、指定され講習を受けた乗員などが、艦付きの臨時郵便局を編成し、郵便業務を行うことがあります。
女性
陸上の施設と違い、空間の利用に制限がある護衛艦では、女性用トイレや風呂の設備を作る余裕がなかったことから、女性自衛官の配置制限が行われてきました。09年3月就役の「ひゅうが」からは女性自衛官の配置が開始されました。新造艦の設計には女性配置を前提とした配慮が行われることが増えています。
医療:医務室
護衛艦の艦内には医務室に常設の衛生科が設けられており、軍医として医官(医師免許を持つ自衛官)や、救急救命士や看護師を含む衛生員が勤務します。医官は、比較的長い航海の場合と有事が予想される場合に乗り組む。医務室では医官による簡単な手術が可能。 南極輸送の任務に就く砕氷艦では、医官1名・歯科医官1名が定員であり、手術の際は歯科医官が麻酔を担当することになっています。
艦内の食堂は有事の際に臨時医務室として使用され、重篤な患者が多数発生して衛生科員の処置能力を超える場合には、トリアージ後に一部または全部の患者が他の艦船や基地に後送されることになります。
捜索救難:護衛艦には、海上救難部署が設けられており、救助用器材も装備している。これに加えて、艦上救難員、潜水士、降下救助員が乗艦しています。船舶火災、溺者救助、航空機救難、曳航などの救難任務にも対応できます。
当直:護衛艦は、航海時・停泊時を問わずいつでも行動できる体制を維持しており、停泊時は課業終了後も上陸せずに勤務に就く乗員が必ずいます。乗員の内、現時点では海士は3日に1回、3等海曹は4日に1回、2等海曹は5日に1回、1等海曹は6日に1回の割合で当直勤務につく。海上保安庁の巡視船艇や民間の船舶で見られるような、乗員全員が上陸して中が無人になる時間ありません。
艦長及び副長を除く幹部と先任海曹は、6日に1回が標準であるが、現員による。停泊中の当直には、当直士官、副直士官、当直警衛海曹、舷門(艦艇の一般受付窓口兼警衛場所の総称)当直海曹、舷門当番など、職種に応じて数種あります。また航海中の当直には、乗員を2-4つのグループに分け当直勤務をさせます。通常航海直(航海当番)、艦内哨戒第3配備から第1配備へと、状況に応じて変化させる。この当直体制は、各科(砲雷科、船務科、機関科)で異なります。防火防水部署などの緊急部署が発動された際は、総員が各々の配置に付きます。
当直士官:当直士官は、艦長が艦の指揮を執らない間の艦の指揮を代行する任務を帯びた士官です。通常航海時には砲雷長、船務長、航海長があたり、停泊時はこの3名に機関長、補給長が加わります。針路変更と速力変更は当直士官であっても勝手には出来ず、必ず艦長の許可が必要となります。
配備 :ここで言う配備とは、艦艇の警戒レベルを意味します。 以下の4種類が存在し、上記のものほど警戒レベルが高い。
戦闘配備-交替は無い、戦闘状態下の配備。艦内の通行も制限されます。各区画は完全に閉鎖され「非常閉鎖」と呼ばれる。食事は食堂ではなく各部署でとられ、缶詰を中心とした戦闘配食となります。循環空気も遮断されるため、一定時間なら生物化学兵器や放射能汚染環境下にも対応します。
哨戒配備-下記の3種があります。通行の少ない、一部の区画が閉鎖され「警戒閉鎖」と呼ばれる。出港中は常時哨戒配備であり、入港中も状況に応じて哨戒配備となります。
第1配備-交替は無い。戦闘などの事態が差し迫っている場合の配備。総員による戦闘配置とほぼ同等。
第2配備-人員は1日2交替で勤務する。
第3配備-人員は1日3交替で勤務する。航行中は最も一般的な配備となる。
第1配備以上になると居住区画のベッドは取り外され、乗員が自分の部署で寝ることや、ベッドが外された居住区画には必要物資が積載されることも想定されています。
艦体設計と生残性 :太平洋戦争での戦訓とアメリカ海軍からの指導を踏まえ、生残性を重視した設計となっています。ダメージコントロールを重視して被弾時に浸水口となる舷窓を廃しており、火災時や化学兵器による攻撃などの際には直ちに各室や通路が閉鎖可能な設計となっています。また、浸水し難い構造にした上で、被弾時の延焼による火災の拡大を防ぐため、可燃物の使用を徹底排除しています。艦内の金属製調度品は擦れ合っても火花が出ない真鍮を使用しています。長期の作戦行動や外交使節任務を前提に装飾や居住性を高めたイギリス海軍などに見られる可燃性の艦内装飾品や、ガラス製の装飾品は搭載しません。
装甲板は火薬庫など一部の場所に限って使用されているが、あくまでもダメージコントロールを補助するものです。ガスタービン機関と発電室は艦内の2ヶ所に分散配置され、一度の損害で艦の能力が全て失われないように配慮されています。ミサイルや魚雷の威力に比べて装甲板の能力には限界があるため、もはや第二次世界大戦までのように広範囲の区画を装甲板で守る集中防御システムは採用されていません。その代わり、データリンクや対空ミサイルを駆使して被弾前に脅威を排除する訓練に力を入れています。
●基準排水量:2000t/満載排水量:2900t
●主要寸法:全長109.0m×幅13.4m×深さ7.8m×喫水3.8m
●エンジン:ガスタービン2基・ディーゼル2基(CODOG)2軸 出力:27000PS
●速力:約27kt
●船型:長船首楼型
●乗員:約120名
●主要装備:62口径76mm単装速射砲×1 高性能20mm多銃身機関砲(CIWS)×1 ハープーンSSM4連装発射機×2 アスロックSAM8連装発射機×1 3連装短魚雷発射管×2
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