純粋な精霊と穢れた人間の話だと思うんだけど、
キャストのバランスで、
純朴な青年を誑かす妖怪の話に思える。
自信たっぷりなオンディーヌに軽くむかつく。
その自信はどこから?
様式美なのはわかるけど。
正直な妖精さんは遠くから眺めるとほのぼのだけど、
近くにいたら面倒かもね。
人間が裏切るという話なんだろうけど、
「あれは自業自得だな」と同情できない流れはどうなんか。
演出家には純真な女の子に見えるんだろうけど、
一般女性はベルタ推しだよね。
オンディーヌがハンスのためを思って身を引いたけど叶わず。
悲しい恋の物語、と泣くべきなんだろうけど、
そもそもは婚約者がいる男を横取りしたのが妖精さんだし、
手に入らない方の女を追いかけちゃう男だし、
と思えてきちゃってねえ。
ラ・シルフィードも妖精の横恋慕だけど、
ここまで自業自得感が無いのはポアントで踊り、
「人間では無い部分」が視覚化されているからなのかなあ。
野村さんだとどうしても
「可憐な妖精という設定です」が先に見えちゃうんだな。
ここがクリアされれば話の印象がだいぶ違うのかな。
私はダメだった。
「トロイ戦争」のときも野村さんは絶世の美女ヘレンで、
皆が彼女の美しさを褒め讃えているのが違和感で、
パリスのべっちに「逃げて~」と思ったけど、
メインは違うカップルだったので物話には入り込めた。
今回はなあ。まあ、主演の個性が強いということかね。
中村さんは「移ろう情熱は若さゆえ」が納得できる青年。
熱い恋情はひとつところには留まらないのさ。
坂本さんは貞淑な美女。
彼女の声は四季独特の発声法であっても
しっとりとした情感が込められ、聞いていて心地よい。