2015年の「ボーダーライン」監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ 主演エミリー・ブラントの続編。
前回はFBI捜査官の、エミリー・ブラントが主演で、事件捜査に関わるようになる平均的な捜査官で、
メキシコとの国境での、麻薬密輸の捜査に加わり、その目を通して、観客も国境の状況を知っていくという作り方だったが、
今回はそのような登場人物はいない。
今回の主役は前回、合同チームで捜査していたジョシュ・ブローリン演ずるマットたち。
メキシコからの不法入国で拘束された、移民の一団の一人が自爆するところから始まる。
そしてカンザスの商業施設でも、複数の男による自爆テロが発生する。メキシコの麻薬カルテルが援助しているのでは、
ということで、CIA捜査官のマット(ジョシュ・ブローリン)が国土安全保障省から、カルテル壊滅を命じられる。
そのためにカルテル同士を争わせるために、前作で出ていたアレハンドロ(ベネチオ・デル・トロ)や部下達とともに、
カルテルのボスの娘イザベラを誘拐して、ボディーガードを射殺して他のカルテルの仕業に見せかける。
娘は米国内の民家に閉じ込めて、米国の捜査官が救出したように偽装する。
そして、メキシコ国内に移送するのだが、先導しているメキシコ連邦警察が寝返り、攻撃してくる。
何とか射殺して、そこから米国側に戻るが、その際、イザベラは車から逃げ出し、アレハンドロは後を追い、取り残される。
アレハンドロはイザベラを保護したのち、親子を装い、国境を越えて米国に戻ろうとするが、
地元がギャングに見つかり捕まる。
一方、マットたちは米国に戻ってから、上司から自分たちの偽装がメキシコ側にばれていて、
カンザスのテロも、カルテルと無関係なホームグロウンテロだとのことで、アレハンドロとイザベラも含め、
すべての証拠を消すことを命じられる。
マットたちはGPSでアレハンドロ達の居場所を突き止め、ヘリで向かうが、着く前に
アレハンドロは銃で頭部を撃たれる。
そして地元ギャングたちの車に追いつき、ギャングたちを射殺して、イザベラを確保する。
アレハンドロは頭部を撃たれていたが、口のところを銃弾が貫通したために助かり、米国に戻る。
前作と同様に、法も人命を無視した、目的のためなら手段を選ばない世界が描かれている。
メキシコ側も麻薬戦争のため、治安も機能していないので、誰が裏切るかわからない世界である。
今回は、前回出ていた、FBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)のような初心な案内役になる役柄はいないが、
前回,非情な殺し屋だったアレハンドロが今回は誘拐したカルテルのボスの娘を護ろうとする展開になっていた。
NAFTAによりメキシコの小規模農家が立ち行かなくなり、都市周辺にスラムが広がり、麻薬ビジネスが広がったことと、
麻薬の大消費地である米国と隣接していること、米国の支援でコロンビアで麻薬ビジネスがやりにくくなったことの影響が大きいのだろう。
NAFTAにより、メキシコのGDPは大きく拡大したそうだが、社会は荒廃しているようだ。
アクション映画でも間接的にそのようなことを示す、ハリウッド映画のすごいところである。
メキシコ麻薬戦争 Wikipedia
メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱 ヨアン グリロ著
マフィア国家――メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々 工藤 律子著