以前の精神科医や思想家たちには、精神分裂病(現在の統合失調症)患者の語ることに
深い真理があるというような風潮があったという。(atプラス30 松本卓也氏らの対談より)
そのため当時は不安障害とされた様々な不安を訴える患者に対して、
言っていることに大した価値は無い、として抗不安剤などを投与するのみで、
あまり関心を持たず、場合によっては、「甘えているだけだから厳しく接しよう」
とのことで、関わらず突き放したり、親に対して甘やかさずにもっと厳しく接するように、というようなことに
繋がっていたのではないだろうか。
そのようなことで虐待やネグレクト、貧困などの家庭や社会の問題からくる影響にも関心を持たなかったのだろう。
優秀でうぬぼれと自己愛の強い医師の方がそのような方向に行きやすかったのではないだろうか。
そのようなことで、さまざま病理現象には興味を持っても、成育歴や成育環境について関心を持ったり、
訊ねることがほとんど行われていなかったのだろう。杉山登志朗氏の一連の著作において記載されているように、
精神医学や臨床心理学において、以前は成育歴について聞く習慣がほとんどなかったとのことである。
優生主義というものは、さまざまな深い影響を与えて来たようだ。
at プラス 30 [特集]臨床と人文知
発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療:杉山登志郎 誠信書房