だいぶ以前から杉山登志郎氏が第四の発達障害として取り上げてきた、生育歴上の虐待などのトラウマの影響で、
先天的な部分が多いASDなどの発達障害と類似の現れ方をしているケースを『発達性トラウマ』として解りやすく
解説しています。
これまでの様々な議論についても解りやすく紹介していますので、これまでどのような経緯を経て
トラウマというものの影響が、近年解るようになってきたのかが解りやすく書かれています。
トラウマの影響がどのようなものか、そしてトラウマによる症状を和らげる方法も紹介しています。
さらに本書では、京大の臨床心理の方が取り上げている『主体』の問題についても取り上げている
ところが他の類似書との違いでしょう。
京大の臨床心理の方々は、発達障害のひとは『境界』が無いことで、『主体』が成立していないとして、
境界を作っていくことも治療の一環としていますが、そのあたりについてはカウンセリングルームで
クライアントを診ている人には解りにくいのかもしれません。
河合俊雄氏は『遠野物語 遭遇と鎮魂』の中で、異なるものと出会うときに意識が発生すると
していましたが、発達障害の人も発達性トラウマの人も、素因やトラウマの影響で、
これまでの自分の認識の枠組みに入らない人などは、認識できないことが、
変化が生じにくい大きな原因なのでしょうか。