マチンガのノート

読書、映画の感想など  

アンダークラス 相場英雄 小学館 感想

2020-12-22 00:15:58 | 日記

「震える牛」では、巨大ショッピングモールを展開する企業と狂牛病について

取り上げていましたが、本作ではネット通販の世界的プラットフォーマー企業と

ベトナム人技能実習生を取り上げています。

事件の始まりは、秋田県能代市で高齢者施設勤務のベトナム人女性介護士が、

入居している高齢者の末期がんの女性に依頼され、車いすごと冬の水路に突き落としたとして、

自殺ほう助として逮捕されたことです。

そして警視庁捜査一課継続捜査班の田川信一警部補が捜査を始めます。

自殺にしては不審な点があったので、キャリア組の女性警視と共に、

ベトナム人介護士が技能実習生として最初に働いていた

縫製工場のある神戸に聞き込みに行きます。

そこでは実質賃金が300円程で実習生たちを酷使し、反抗的な態度を取ると

大型犬用の檻に監禁するなど、人権無視の扱いが横行していました。

デフレ経済下の日本では、アパレル製品は安くてさらに品質も良いものしか

売れないので、下請けである縫製工場も、単価の低い仕事しか回って来ないので、

人件費圧縮のためにベトナム人実習生を呼び寄せて働かしているのでした。

捜査を続けるうちに、田川警部補はネット通販企業の管理職にも事情聴取して、

事件の真相を探るのでした。

そして真相が明らかになっていくのですが、「震える牛」と同じように、

犯人が実際に自ら手を下す動機がいまいち説得力のない展開になっていました。

社会派小説とミステリー小説とを組み合わせて作ることの難しさが

伝わる展開でした。

しかし社会派小説としては出色の出来になっていたので、十分な読み応えのある

小説でした。

著者の相場英雄氏は地方の経済に詳しい方のようなので、

それが十分に活かされた一冊になったのでしょう。

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アクト・オブ・バイオレンス  ネタバレ 監督 ブレッド・ドノフー 出演 ブルース・ウィルス他

2020-12-12 22:56:27 | 日記

超人主人公時代の終焉?

ローマン(アシュトン・ホームズ)は婚約者が誘拐されたので、退役軍人の兄デクラン

(コール・ハウザー)、ブランドン(ショーン・アシュモア)と共に犯罪者グループから

奪回しようとする話です。

最初は警察に相談しますが、あまりあてになりそうではないので、自動小銃や自動拳銃、防護服

などを使い、犯罪者グループに反撃します。

刑事のエイヴリー(ブルース・ウィリス)は、犯罪者グループの主犯格を捕まえようとしますが、

上司の許可が下りません。

実際の戦争に従軍した退役兵の方にとっては、犯罪者グループとやりあうのは、

それ程抵抗が無いのかもしれません。

さらに軍用のHK416や自動拳銃が合法的に手に入るアメリカなら、考える人は

けっこう居るのかもしれません。

兄弟たちの行動が雑めに展開しますが、それによって実際にありそうな話に思えました。

この映画のポスターも、日本版と海外版ではかなり違い、日本版は情報の

詰め込みすぎに感じました。

BD/DVD/デジタル【予告編】『アクト・オブ・バイオレンス』8.3リリース/デジタル同時開始


ALONE アローン 監督ファビオ・レジナーロ  ファビオ・グアリョーネ 主演 アーミー・ハマー 感想

2020-12-12 15:59:44 | 日記

けっこう良作

よくある低予算映画かと思い視聴しましたが、結構いい映画でした。

狙撃兵の米兵が砂漠でテロリストを射殺しようとしますが、

息子と思われる男性の結婚式の付き添いで来ているので、主人公の狙撃兵マイク

(アーミー・ハマー)はためらい、敵に見つかり徒歩で脱出します。

何とか敵をまいても救出のヘリは来ず、同僚のスポッターのトミーと何キロも砂漠を

進むうちに、トミーが地雷を踏んで重傷を負い、マイクも地雷を踏みます。

その地域は長年にわたり紛争が多いので、大量の地雷が埋設されているのでした。

感想

地雷を踏んだマイクは足を離すと爆発するので、砂漠の中で動けなくなり、

暑さと渇きから自身の過去の事のフラッシュバックや幻覚を体験します。

地元の村に住むベルベル人の男性や、その娘が出てきますが、彼らは貧しいので、

地雷を掘って売り収入にしていますが、危険なので大怪我をしたり

亡くなったりする人も出ます。

地雷を踏んで動けない主人公のマイクにいろいろと話しかけるベルベル人役の男性が良かったです。

米・伊・スペイン製作の映画ですが、米兵の主人公のみではなく、

紛争地帯に住む人たちの事も描いた映画になっていました。

『ALONE/アローン』予告編


風致の島 赤松利市 感想

2020-12-08 23:50:26 | 日記

著者が被災地で作業員として働いていた時に所長だった、

スーパーゼネコンのエリート社員をモデルにして書いた小説のようですが、

話を拡げすぎて、何かとまとまりが無かったです。

イタリア系のマフィアや印僑が出てきますが、そちらは間接的に聞いた人の事を

モデルにしているようで、リアリティが感じられませんでした。

これまでに書いた被災地を舞台にした小説は著者の実体験を基にしているので、

内容にリアリティがあり、読み甲斐がありましたが、この本に関しては、

そうではありませんでした。

やはり赤松氏は自身で体験したものを書くほうが、向いているようです。

東南アジアの失脚した政治家や、中国に雇われたならず者達を出していますが、

ストーリーが拡散していき、まとめられていない印象が感じられました。

赤松氏はやはり自分の得意分野について、時間をかけて、じっくり書いたほうが良いようです。

風致の島 赤松利市