そぼ降る小雨の中、小さな篝火のようなキャンプファイアーが作られた。
こんな小さな火でも、火がある景色って、空気全体を暖かく穏やかに包んでくれる優しさがある。海の大きさ、氷河の雄大さに比べて、小さな火が、健気にパチパチ小さな音を立てて、頑張っている姿が愛おしくて、温かい気持ちになった。
今日のデザートはチョコレートムースのタルト、キュウイとチョコレート添え。簡単なデザートだけど、キャンプ場でこれが出てきたら、高感度一気に急上昇。26キロ強行軍の疲れもこれでバッチリ取れます。
火に見守られながら、少しずつ夜が更けていった。
涼子さんが 星野道夫の「旅をする木」から『もうひとつの時間』の一節を読んで聞かせてくれた。
「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろう。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」
「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いて見せるか、いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな」
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆく事だって… その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」
自然の中に包まれながら、ぼんやりと考えた。
自分の人生が、幸せで恵まれていること
アラスカにやってきて、ここでキャンプができる私達は、本当に恵まれているということ
お金では買えない、自由、空気、時間、仲間 がここにはある
幸せな時間、贅沢な時間
ここに来ることができたことに感謝
私は私で良かった
いろいろあったけど、この人生で良かった …
と素直に思ったキャンプファイアーの夜