大雪の空

46歳から始めて嵌ってしまった山歩きの記録と野球などの雑記帳。時々帰郷中の島暮らしの日常。

思い出の山 知床縦走(羅臼~硫黄)

2010年04月07日 | 北海道

2002年の7月に知床の斜里岳と羅臼岳をやる予定をたてた。
ところが直前になって台風の大雨で斜里岳に入山できなくなり、急遽
羅臼岳から硫黄山へ縦走し、カムイワッカへ下山することにした。
後で考えるとこっちの方がよっぽど楽しい山だったのだから大雨に感謝。
多分斜里岳だけをやるために行くことはないだろう。
この年の6月から7月は
奥多摩酉谷小屋泊、会津朝日岳、北岳周遊、焼石岳への山旅と続き、締めが
この知床縦走と何とも充実した山をやっている。

2002年7月13日-14日 山中1泊2日(単独)

1.初日
羅臼岳から三ツ峰まで

前日釧路へ飛び、JR釧網線で清里ユースホステル泊。翌日JRとバスで
岩尾別まで行き、木下小屋前の登山口から羅臼岳へ登りだした。
斜里からのバスは単独3人で大阪からの30前後のM氏と広島からの年金おじんのK氏。
M氏とは三ツ峰の幕営場で一緒になり翌日も二ツ池先まで同道した。
羅臼への登りは楽だったが強烈なムシ暑さでたっぷりと汗を搾られた。
弥三吉清水はタップリ流れており、思わず生水をゴクゴク飲んでしまった。
エキノコックスのことなど何処かに飛んでしまっていた。とにかくとんでもないムシ暑さ
だったのだ。
その水場向かいの藪に捨ててあったミカンの皮を降りてきた若者に持ち帰るよう頼んだ。
大沢の雪渓も台風で相当融けていたがツメは階段状になっていた。
花は殆ど無く、ゴゼンタチバナとマイヅルソウくらい。
大沢上から花がポツポツ出てきた。
羅臼平はメアカンフスマ、エゾノツガザクラが目立つ。
頂上途中のあの岩清水は台風のおかげで水量タップリで美味だったし、イワウメが
生き生きとしていた。ここで水を補給すればエキノコックスの心配も無かったのだが。
エゾノツガザクラとイソツツジが多い。
頂上からは国後の山も見えたし、目指す三ツ峰は目前、その先にサシルイ岳、
硫黄山(ひょっとするとみえなかったかも自信なし)。
イギリスからの若者4人も登ってきたが東洋系の2人は完バテ状態。チョコを一個づつ
やる。話の中身は良く解らなかったが You did it! (やったね)だけは解った。
羅臼岳までは百名山のため人だらけだったが、縦走路に入ったとたんに誰もいなくなった。
幕営はオバン3人組、硫黄までピストンして19時頃帰営したオジン3人組、M氏と
俺の4組。縦走は二ツ池まで先行した2Pを入れてたったの5Pという少なさで静かな
歩きが楽しめる。
幕営場傍に熊対策の白いボックスのフードケースがあった。
水は雪渓の水で、羅臼岳の岩清水を汲んでくればと後悔したが後の祭り。

2.二日目
三ツ峰から硫黄山をかすめてカムイワッカへ下山

撤収の途中でパラパラと来たので雨具をつけたが、たいした事無くあまりの暑さに
サシルイ上部のトラバースで脱いだ。サシルイからの下りは雪渓が大きく、ためらわずに
6本爪の軽アイゼンを着けた。おっかなビックリ歩くよりは時間のロスが無い。
このアイゼンが後で大活躍するとは夢にも思ってなかった。
雪渓の末端から沢の中を歩き、途中で90度左折してからオッカバケの登り。M氏は
先を歩こうとせず、その時は遠慮深いなあと思っていたが後で考えれば俺を熊避けに
していた訳で、何ともお人よしというか、考えが浅すぎた。
サシルイ程の傾斜は無く楽だが、道がえぐれており少々歩き辛い。
途中から岩っぽくなり格段に歩きやすくなった。
二ツ池手前も岩っぽく、池周辺は道がわかり辛い。なんだか湿っぽくて三ツ峰で寝て
正解だった。
さあここでとんでもないトラブルが発生した!
まさかわが身にと驚くトラブルとは―何と靴底が剥がれてしまったのだ。
最初は左、すぐに右とあっという間に駄目になってしまい目の前が真っ暗。
この先まだ長い歩きが残っているのに一体どうすればいいのか、先行していたM氏を
呼び止め、紐をもらうがたいして役にたたない。あまり関わりたくないM氏はさっさと
先行する。しばし気を落ち着かせて考える。
要するに底を造ればいい訳で、ひらめいたのがあの”軽アイゼン”
さっそく着けて歩き出す。当然ながらすこぶる歩きやすい。
気分もすっかり落ち着きマイペースで歩き出した。南岳はどこか分からぬまま知円別分岐に
向かい、途中のシレトコスミレ、メアカンキンバイ、メアカンフスマの群生地では彼女らを
踏みつけぬように歩かねばならずシンドかった。分岐手前のチングルマの群生するなかの
かぼそいトレイルの歩きが最高だった。盛り、蕾、終わりかけなどのチングルマだらけの
なかを歩くのだから気分の良いのは当たり前なのだが。
その後歩いた裏岩手縦走時の霧にけぶる池塘とニッコウキスゲの間の道の歩きと甲乙
つけがたい。
知円別分岐には11時20分に着き(出発時刻の記録が無いが6時頃だろう)、先行の
オバン3人組と相泊まで沢で行くという若者に会う。
ここで大ボケをかまし、何時間で行くのかと聞く有様で何とも恥ずかしい。
4泊5日もかかるらしい。熊だらけの中をよくやるもんだ。
分岐からは白ザレで両サイド切れ落ちている嫌な道だがアイゼンのおかげで楽々と歩いた。
コルから雪渓の右縁(アオノツガザクラとエゾノツガザクラが埋め尽くしていた)を登って
硫黄の肩に降りたが巨岩帯でアイゼンではやばかった。
硫黄には登らずに、カムイワッカへの下山地点まで稜線の縁をエイヤーと小走りで歩いたが
湿っていたのとアイゼンのおかげで無事に辿り着いた。
下山地点からは雪渓が残っており、左上に登り出す地点まで20分から30分近くかかった
みたいだが大岩に目印がしてあった。登りきってからは這い松の根っこだらけの道でまだか
まだかと毒づきながらひたすら歩いた。
途中ウトロの女性と同道する事になり、いろいろとしゃべりながら降り、15:30に
バス停に到着。あのM氏とも再会。
木下小屋に泊り、サンダルをもらって翌日帰った。
夕食は管理人夫婦のを分けてくれて大助かりだったし、小さいが露天風呂にも入れて
良かった。

花の記録

羅臼平まで
ゴゼンタチバナ マイヅルソウ ミネザクラ エゾコザクラ ウコンウツギ チングルマ
ミツバオーレン キバナシャクナゲ エゾノツガザクラ アオノツガザクラ

羅臼平周辺
チシマノキンバイソウ メアカンフスマ コケモモ イソツツジ ナナカマド 
メアカンキンバイ

羅臼岳途中の水場に イワウメ イワヒゲ ミネズオウ

三ツ峰まで ハクサンチドリ チシマフウロ エゾヒメクワガタ エゾツツジ

南岳 シレトコスミレ (コマクサがあったらしい)

翌朝、ホテル地の涯先の無料の露天風呂に入りに行ったら、釧路からの列車で一緒だった
台湾の娘達6人が足湯をやっていた。
3段くらいになっていたが幸い娘達が一番下にいたので、一番上の風呂にえーいままよと
飛び込んだ。暫くすると一行が帰ったのでノンビリ楽しんだがあきれたかも。
それと帰りのバスに途中で乗り込んできたアイヌの娘さんの美しさに度肝を抜かれたのが
忘れられない。とにかく肌の色が抜けるように白く、オーバーではなくこの世の者とは
思われなかった。
最初の一瞥で一瞬北欧から来たのかと思ったくらいにエキゾチックな人だった。
こんな美しい女性に言い寄られたら馬鹿な松前藩の小役人共はころっとたらしこまれたろう。
殺される前にいい夢を見られて案外幸せだったかも。
何はともあれ無事に知床縦走を終え充分に満足した旅だった。
次回は礼文・利尻の記録。





コメント
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