大雪の空

46歳から始めて嵌ってしまった山歩きの記録と野球などの雑記帳。時々帰郷中の島暮らしの日常。

思いでの山 北アルプス編 ⑥ 涸沢から奥穂と北穂

2010年04月24日 | 北アルプス

94年に山をやりだし、翌年の秋山に同僚のM氏、I氏の3人で歩いた。
槍や白山などの素晴らしい眺望、10年に一度の鮮やかな紅葉とそれまでで1番の山行だった。
M氏はもうこのブログ常連の人物だが、I氏はこの後数年して日帰りの山しかやらなくなったので初登場だ。今後南アルプスの「荒川三山と赤石岳」他に登場予定。
前夜新宿からの夜行バスに乗り、上高地に入った。

1995年9月29日-10月1日(山中2泊3日)(M氏、I氏同行)

1.初日
上高地から涸沢ヒュッテ

5:50-6:40明神7:50-8:30徳沢-9:45横尾-11:15本谷橋12:20-14:20

早朝だと言うのにこの人混みはなんなんだ。いくら上高地といってもすご過ぎないか。
なんかとんでもない夜になりそうだ。
退屈な歩きで横尾に着いて、槍に行くという昨夜のバスでM氏の横に座った中年女性とお別れだ。
M氏が「槍なんか止めて俺達と一緒に涸沢に行こうよ」とナンパしてる!
おいおいそりゃあいくらなんでもちと無理でないか。
予想通りにオヤジ三人で仲良く歩き出したが、左に屏風岩が大きい。後ろには蝶ケ岳の稜線が霞んでいる。
本格的な登りが始まる本谷橋で昼飯とするが、あちこちに食事や休憩のパーティーがいる。
色づいたなか、稜線を右手に見ながら黙々と足をあげる。石の階段が現れ小屋の近いのを知らせてくれた。小屋に着き、おでんを売っているテラスに出て文字通り絶句!
青空と岩壁の下に黄色と赤、緑の塊があっちこっちで虔を競っている。
うーん、すごいの一言。噂には聞いていたがこれほどとは。三人とも無言で呆けたように突っ立ている。丹沢の紅葉など横綱の前の取りてきみたいなもんだ。恐れ入りました。
おでんとビールで小腹を満たしながらしばしこの絶景を楽しむ。もう2度と見られないかもしれないんだから、しっかりと瞼に焼付け、脳に刻み込んでおこう。
至福の時間の後は対照的な難行が待っていた。夕食の後のフトンの割り当てで2人で1枚と言っている。「ゲェッ、汗臭いオヤジと同衾かよ」と明日の本当の地獄を露知らず、暢気なことを口走った。
まああの紅葉を見たんだから我慢するかと自分を納得させて何とか寝た。

2.二日目
涸沢ヒュッテから北穂-奥穂、涸沢小屋

5:15-8:35分岐ー8:50北穂高岳-9:30分岐-11:45涸沢岳-
12:30-穂高岳山荘12:50-13:20奥穂高岳-14:00山荘-16:00

さあ今日は楽しい岩稜歩きだ!張り切って歩き出したが、いやあー何度見ても素晴らしい紅葉だ。朝日に輝く稜線といい、天下一かもしれないと本気で思う。

北穂南稜への登り始めで短い梯子が出てきたが、この数年後だったか続けて2人の女性が滑落死したらしい。
後ろを振り向くと涸沢カールの色とりどりのテントの上にゴジラの背みたいな前穂高岳がボリューム満点。
分岐からわずかで待望の北穂頂上だ。大キレットの先の槍が鋭く天を突いている。
ここも眺望の絶景だ。真西正面に笠ケ岳、そのはるか彼方に案外と大きい白山、黒部五郎岳、槍、常念、蝶、南アルプス、富士、前穂とまあ豪華絢爛たる山岳風景だ。
北穂の小屋はこじんまりしていて混雑時は大変だろう。しかし涸沢まで2時間もあれば降りるだろうからいいか。
さて先は長いし、あまり岩が得意でない2人なので奥穂を目指そう。
分岐の先のドームを廻りこんだ先のテラス状の岩で軽く食べる。
一旦鞍部まで下り、今度は涸沢岳へ登り返す。なんともダイナミックな登下降ではある。
途中で行き違った2人組が真下で休んでいる。落石を起こせば大変だ。北穂を少し登った所で休むべきだろうがといっても始まらない。慎重に手足を動かす。
廻り込んで滝谷側に入った所で女性二人が座り込んでいる。キレ落ちたトラバースだが下を見たら恐怖で足がすくんでしまったらしい。ホールドはしっかりしているので3点支持さえやれば何でも無い所なんだがなあ。このままじゃあまずかろうと、足の置き場を教えてなんと越えさせた。片方の若いのが山慣れていなくてトラブったらしい。
いつまでもかまっていられないので冷たいようだが先行する。
奥穂の小屋が見えると今度はザレの下りだ。こっちの方が厄介なんだが、転倒もせず無事到着。
小休止して奥穂を目指すが、テント場が超狭い!こりゃスペース確保は大変だぞ。
テント派には稜線上でもあるし、ちと使いづらいテント場ではある。
登りだしてすぐの梯子で大失敗。直径5cm程の石を落としてしまった。ガラガラと派手音をたてて落ちていったが道を外れていて事なきをえた。危ない危ない。
奥穂の頂上からはジャンダルムが案外と丸っこく見える。予定では奥穂の小屋に寝て、前穂から岳沢へ下山の予定だったが明日が天気悪そうなので今日降りることにした。
ザイテングラードを降りるので小屋に戻ってみると先刻のオネエ達がいて若い方が泣いている。
緊張がとれてホットしたんだろう。頑張ってちょうだい。
岩道を一気に駆け下るが後続の2人がついてこない。横尾は諦めて涸沢小屋泊まりに変更。
これがとんでもない地獄行きの選択だったとは。まあちょっとは救いがあるんだが。
行動時間が10時間を超えていたし、まあ妥当な判断だったとは思うが、想像を絶する客の襲来だったのだ。
夕方テラスに出てみると、件のオネエ達がいた。明日は沢渡に置いてきた車で帰るというので、松本まで送ってもらうことにする。時間調整がちと難しいが、何とかやれるだろう。
さて地獄とは何とフトン一枚に4人だと!!
頭と足を入れ違い、つまりオイルサージン状態に、おまけに横になってくれだと?!
なんてこったい。トイレにでも行った日には空間が無くなってるじゃないか。まったくとんでもない事になったぞ。
この時は野宿のやり方も知らなかったし、諦めて指示通りに横になって寝たが、その後寝たのか、はたまたトイレに起きたのか、全く憶えていない。あまりの悲惨さに脳細胞が自壊したのかもしれない。

最終日の3日目はオネエ達と無事ドッキングして、沢渡から松本まで送ってもらった。
まあこれがあの地獄でチラっと垣間見えた天国の空というわけだ。

次回はY氏と歩いた秋の奥又白池。

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思いでの山 北アルプス編 ⑤ 八方尾根から後立山縦走

2010年04月24日 | 北アルプス

2005年に少しでも人が少ないだろうと9月中旬に歩いたがとんでもなかった。
この年は2週間前に黒戸尾根から甲斐駒、7月には月山から念仏が原を抜けて肘折温泉、10月の紅葉は東北一といわれる栗駒山と結構充実している。
南アルプスや東北とは違うとは分かっていたがこれほどとは。

それと久し振りの営業小屋はやっぱり満足できず、よっぽどでなければ使うまいと思った。


コースは八方尾根から唐松の小屋とキレット小屋に寝て、鹿島槍を越えて扇沢までの超ポピュラーな道。
途中の八峰キレットがちょっとしたスパイスだ。

2005年9月17日-19日(山中2泊3日)(単独)

1.初日
八方尾根から唐松岳頂上山荘 (11:50-15:30)
 
相変わらずの人の多さだが池までは殆ど観光地なのだから仕方が無い。
八方池越しの不帰ノ嶮の雪渓が大きい。これから先は少しは歩きやすくなる。
雪田の残る丸山下で昼飯にして歩き出す。さすがに小屋泊まりだと荷が軽いぞ。
着いた小屋下のテント場は棚田状で使いやすそうだが水汲みやトイレがちと辛い。
空身で唐松の頂上をピストンしたが30分もかかった。
キレットは案外面白そうだが、テントではちと辛いかもなあ。
小屋の混雑はそれほどでもなかったが、紅葉の時期前なのに結構な客だ。
食事の内容は何も覚えていないということは旨くなかったらしい。
これは翌日のキレット小屋も同様。16年前に泊った北岳肩の小屋のまずいミートボールと色がついただけの味噌汁が忘れられないのよりはましか。あそこの飯はひどかった。
夜はいつもと違って充分に寝たようだった。

2.二日目
頂上山荘から五竜岳を越えてキレット小屋

5:30-9:30五竜岳9:55-11:45北尾根の頭-12:10口の沢のコル-13:50

朝一番は岩場の下りから始まったが、身体のキレがなく案外とぎこちない。先行するオバン達も苦戦している。
付き合っていられないので早々に追い抜いて先を急ぐ。
五竜岳がドッシリとしていて何か風格がある。

途中で俺が住んでる町に自宅がある伊勢崎に赴任中の単独行と知り合い、何やかやと話しながら歩いた。五竜山荘で別れてまた一人で歩き出す。


見上げると岩壁が覆いかぶさってくるようで迫力がある。

登りが列をなしているのが見える。
さすがに人気のルートだけはあるが、行き交いやら、追い抜き、追い越されとせわしない。
それにしても若い女性、それも単独が結構いるのには驚くやら感心するやら。
東北や北海道、南アルプスとはえらい違いだ。

婚活で苦戦中の山屋さん、北アルプスの人気ルートを歩いて嫁さん探しした方がよさそうですぜ。
さて五竜の頂からは双子峰の鹿島槍が稜線の先にスッキリした姿で鎮座している。
右手には剣岳が大きい。しばし絶景を眺めながら軽い食事でガスの補充をする。

下山開始するが、行く手の稜線の左サイドの明るい緑と右サイドの黒っぽい色の対称が美しい。
岩大好き派にとっては最高の道なんだが、ザレの下りは要注意だ。

十分膝を使わないと一瞬で転ばされる。
八峰キレットがあるので歩く人間が少ないだろうと思ったがハズレだった。

百名山が二つやれるし、なかなか気分のよい歩きができるんだから当たり前かもしれない。


キレット小屋は何というところに在るんだとあきれるくらいだが、手前の岩場のトラバースがちと厄介で一番緊張した。

3.3日目
キレット小屋から鹿島槍を越えて扇沢

5:50-8:00鹿島槍南峰-9:15冷池-11:15種池-13:15扇沢バス停

予想通り朝から小雨が降っている。八峰を歩くのには悪条件だが、まだ風が無いだけましだ。
岩はしっかりしており、ホールドもあるのでそんなに問題は無いが、一箇所だけちとむずかしいところがあった。
クサリが殆ど印象に残ってないくらいだからそう難しくないが、下りに使うのは敬遠した方がいいかも。
鹿島槍の吊り尾根に飛び出しても小雨とガスで、北峰はパスして南峰へ。
途中冷池山荘あたりで合羽を脱いだ。鹿島槍を越えたらどっと人が増えた。
ピストンのツアー客も続々とやってくる。

何だかクソ面白くない爺ガ岳の道を辿り種池山荘着。


後は扇沢への下りだけだ。石畳みたいな道をノンストップで降り、車道を右に歩いてバスセンター。
トイレで汗を拭きサッパリしたが、入ってきた連中が露骨に嫌な顔をしていた。
得意のヒッチハイクもここでは無理で、おとなしくバスに揺られて信濃大町に出た。


駅で食ったキレット小屋のウナ弁の不味かったこと。

薬の味がして後味が悪いったらない。
中国産のクスリ漬けウナギだったのだろう。

旨かったなどと書いてあったHPがあったがどういう舌なんだ。


さすがに面白いコースだったが人の多さが玉に瑕というのは酷か。
いいコースだから俺みたいな奴でも歩くんだもんなあ。

北アルプス編も残り三つとなった。
山をやり出した翌年に歩いた秋の涸沢からの「奥穂と北穂」。
Y氏と歩いた「奥又白池」と「徳本峠越え」の三本。







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