徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

僕の「近江山河抄」

2012-06-17 20:31:44 | 文芸
 滋賀県の彦根に在勤していた頃、県内の高校をリクルーティングして廻った。大津方面へ出かけた時、帰りのルートはいつも琵琶湖の湖岸道路を通った。中山道(国道8号)で近江八幡まで来ると、左折して湖岸道路へ回るのがおきまりのコースだった。長命寺川を渡る辺りまで来ると、車窓から見える素晴らしい景色が僕のお気に入りだった。白洲正子の「近江山河抄」の中に、「近江の中でどこが一番美しいかと聞かれたら、私は長命寺のあたりと答えるであろう。・・・」というくだりがある。その当時は「近江山河抄」は読んでいなかったので影響を受けたわけではなく、後年読んで「なるほど!」と納得した次第である。ただ、当時僕には一つ問題があった。それはいつも長命寺山の麓を通り過ぎる辺りで決まって、かすかな胸苦しさを覚えるのだ。湖岸道路の中でそんな気分になるのはそこの地点だけだった。僕は霊感とかには全く縁のない人間なのだが、何か歴史的な祟りでもあるのだろうかと地元の同僚にたずねたこともあるが、特に何の心当たりもないという返事だった。結局、原因はわからないまま僕はしばらくして滋賀から転勤した。今でも時々あれはなんだったのだろうと想い出すことがある。




湖岸道路から琵琶湖西岸を望む