徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

僕の「近江山河抄」 -2-

2012-06-18 23:50:05 | その他
 サラリーマン時代、僕は約20年間で10市町村に移り住んだ。いわゆる“転勤族”と呼ばれるやつだ。だから一か所の滞在期間は平均すると2年ほどだった。各地それぞれいろんな想い出があるが、その中で滋賀県の彦根は、今になってみると惜しいことをしたという想いが一番強い。というのは琵琶湖の周辺は日本の文化の発祥地と言われるだけに、名所旧跡にはこと欠かないし、どこを眺めても風光明媚なところばかりだ。にもかかわらず、2年間の間にじっくり見たところがほとんどない。もちろん仕事でも県内各地を回ったし、何カ所かは家族と観光にも行った。しかし、滋賀を離れてみると、ここも見ていない、あそこも見落としたというところが山ほどある。
 僕が住んでいたのは彦根市内の高宮町という町だった。その昔、中山道の64番目の宿場町であり、「お多賀さん」として知られる多賀大社の門前町でもあった。町内にはそこかしこに往時を偲ばせる風情が残っていた。すぐ近くには芹川という清流が流れていて夏には小振りながら鮎が釣れた。冬の伊吹降ろしは凄まじく、べっちゃりとした重たい雪が横殴りに吹きつけた。仕事の面では今なお残る問題が僕を悩ませた。そんなこんなで決して良い想い出ばかりではないけれど、もう一度行ってみたい町の一つであることは間違いない。