ブルックナー
交響曲第8番
指揮…チェリビダッケ
演奏…ミュンヘンフィル
好み度…5(5点満点)
1994年 リスボンでのライブ
いつか堤/札幌響のチャイ5の評に「その人たちがあるとき何かがはまるようにふと一丸となって熱く自分たちの満点を取りにいく空気になったときにこういう演奏が生まれるのではないかと思う。」と書いた。が、こういう演奏を聴くと、いや、もうもはや取りにいってできるものじゃないな、と思う。
このCDの許さんのライナーには「演奏家がいつどこでよい演奏をしてくれるかは、必ずしも予想できるものではない。どういうわけかすごいことになってしまったという例がおそらくいくらでもある」とある。多分、名演と呼ばれるものは狙ってできるものではないのだろう。この、1994年のリスボンでの、長らく伝説の演奏として語られてきた演奏は、そういう演奏を、幸運にも良好な状況で記録できた、そういう盤の1つなのだろう。
冒頭の圧と言うか、迫力は並大抵ではない。同曲の盤中随一では、と思う。ゆっくり、重く。その後もチェリらしいスローテンポで重量感を感じさせ、1993年盤よりも活きた艶と深みも感じようであり(1993年だって手を抜いたわけではないだろうし、立派な演奏ではあるけれど、何かが、微妙に、しかし決定的に違うようにも思う)、第2楽章も雄大ですらあるが、このスローテンポあるいは重みは好みも分かれるだろうとも思われ、第1楽章と第2楽章だけなら、こんなにも有名な盤にはなっていなかったかも、とも思う。この盤が、他のいかなる盤も持ち合わせていない特異性を発揮するのは終盤2楽章だろう。
第3楽章は一見穏やかに見えて凄い水圧で複雑に美しく織りあう大海原を見るようであり、あるいは空間まるごと恍惚の光に包まれるような、そんな時間と言うよりは空間の持続に、自分もいっしょに包まれているような、もはや他の盤とは別のものと思ったほうがよい(他が劣るという意味でなく)次元のものになっている。終楽章も堂々たるもので終盤のスローテンポはもはや好み云々を超えた迫力と説得力を持っているように思う。
録音も会場の空気感も感じられるようで良好、1時間40分は長いけど冗長に感じない、好みはあろうが、圧倒的な存在感と重みと大きさと美しさを持った名盤と思うし、チェリの盤をどれほど知っているかといわれれば何とも言えないが、チェリの代表盤と言ってもよい盤なのだろうと思う。こういう演奏は多分スタジオでは生まれないし、ライブでもこういう演奏を記録できることはごく稀なのだろうと思う。
交響曲第8番
指揮…チェリビダッケ
演奏…ミュンヘンフィル
好み度…5(5点満点)
1994年 リスボンでのライブ
いつか堤/札幌響のチャイ5の評に「その人たちがあるとき何かがはまるようにふと一丸となって熱く自分たちの満点を取りにいく空気になったときにこういう演奏が生まれるのではないかと思う。」と書いた。が、こういう演奏を聴くと、いや、もうもはや取りにいってできるものじゃないな、と思う。
このCDの許さんのライナーには「演奏家がいつどこでよい演奏をしてくれるかは、必ずしも予想できるものではない。どういうわけかすごいことになってしまったという例がおそらくいくらでもある」とある。多分、名演と呼ばれるものは狙ってできるものではないのだろう。この、1994年のリスボンでの、長らく伝説の演奏として語られてきた演奏は、そういう演奏を、幸運にも良好な状況で記録できた、そういう盤の1つなのだろう。
冒頭の圧と言うか、迫力は並大抵ではない。同曲の盤中随一では、と思う。ゆっくり、重く。その後もチェリらしいスローテンポで重量感を感じさせ、1993年盤よりも活きた艶と深みも感じようであり(1993年だって手を抜いたわけではないだろうし、立派な演奏ではあるけれど、何かが、微妙に、しかし決定的に違うようにも思う)、第2楽章も雄大ですらあるが、このスローテンポあるいは重みは好みも分かれるだろうとも思われ、第1楽章と第2楽章だけなら、こんなにも有名な盤にはなっていなかったかも、とも思う。この盤が、他のいかなる盤も持ち合わせていない特異性を発揮するのは終盤2楽章だろう。
第3楽章は一見穏やかに見えて凄い水圧で複雑に美しく織りあう大海原を見るようであり、あるいは空間まるごと恍惚の光に包まれるような、そんな時間と言うよりは空間の持続に、自分もいっしょに包まれているような、もはや他の盤とは別のものと思ったほうがよい(他が劣るという意味でなく)次元のものになっている。終楽章も堂々たるもので終盤のスローテンポはもはや好み云々を超えた迫力と説得力を持っているように思う。
録音も会場の空気感も感じられるようで良好、1時間40分は長いけど冗長に感じない、好みはあろうが、圧倒的な存在感と重みと大きさと美しさを持った名盤と思うし、チェリの盤をどれほど知っているかといわれれば何とも言えないが、チェリの代表盤と言ってもよい盤なのだろうと思う。こういう演奏は多分スタジオでは生まれないし、ライブでもこういう演奏を記録できることはごく稀なのだろうと思う。
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