ブルックナー
交響曲第8番
指揮…ヴァント
演奏…バイエルン放送響
好み度…5(5点満点)
ベルリンフィルとの録音よりだいぶ前の録音ということになる。ベルリンフィルとの盤では鉄壁のような厚い重さと完成度がいかにもブルックナーの王道という感を与えたが、こちらは王道然とした完成度の代わりに、ヴァントの、この曲への熱が、若い分だけストレートに、テンポの揺れとなって、あるいは歌となって、あるいは熱の込もった響きとなって、あふれ出ているような、そんな印象を受ける。第3楽章ですらほんのり明るく瑞々しい活力を感じるよう。
厚く熱を帯びながらも透明感を漂わせるバイエルンの響きもいいし随所で低弦が骨太な活力をもって心地よく響き、金管も耳に尖らずしかし団子にならずよく鳴っている。終楽章の力感もいいし、ヴァントのブルックナーは、気の効いた内声とか印象的なテンポの設定とかが特にあるわけではないのだけれど、一音一音ががっちり美しい。力強い信念を感じるような。ヴァントの実直はブルックナーと相性がいいな、と改めて感じる。バイエルンのいいところも出て、厚く清らかに活きた力感にも満ちたブルックナーらしい名盤の域かと。
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