Moods/Bud Powell
(Verve MGV8154, jp.reissue)
モダンピアノの話になるとパウエルは避けて通れない存在ですよね。精神病、麻薬、渡欧と困難を抱えながらのイマジネイティブなアドリブはパウエル派と称され今日のジャズピアノの礎的な価値で語られる事が多いですよね。ルースト盤、Verve初期の"Jazz Giant"や"Genius"等51-53年の録音は常に彼の足跡を語る上で必聴の名盤でしょう。これに続く54年から50年代、後半のパウエルは好不調の波があり全盛期を越え下り坂にかかったプレイとして認識されているのかもしれません。でも、この時代になると、超絶テクニックで早弾きするというよりは、バラードを訥々と弾きながら、一聴モンクを思わせる不協和音を使って行くスタイルが目立って来ます。こうしたバラード演奏は風格すら漂わせ却って好ましいと感じる方も多いのではないでしょうか?本日は、原盤ノーグランの"Moods"をアップいたします。
ここでは54年と55年のセッションからなるピアノトリオ(一部bassとのduoあり)演奏がおさめられています。54年セッションはGeorge Duvivier, Percy Heath(b), Art Taylor(ds), 55年のものはLloyd Trotman(b), Art Blakey(ds)というパーソネルです。ここで取り上げられるスタンダードバラードはA面では"Moonlight In Vermont", "Spring Is Here", "It Never Entered My Mind", "A Foggy Day", B面では"My Funny Valentine", "I Get A Kick Out Of You", "You Go To My Head"です。いずれもゆったりとした、落ち着き、寛ぎを感じる演奏で、一つの頂点を極めたものだけに醸し出される風格すら感じてしまいます。そういう意味で、パウエルの人気盤の一つであろうと思います。
もちろん、ノーグランでもない、トランぺッターでもない国内盤再発です。この辺りはオリジナルがとても高価であり、ノイズの少ない国内盤で楽しんでいます。オリジの音も聞いてみたいアルバムでもありますね。