ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

オルフォイスへのソネット第二部・25

2010-03-07 23:10:06 | Poem
耳をかたむけよ、もう 最初の熊手の仕事が
聴こえてくる――力強い早春の大地の
息をひそめた静寂のなかにふたたび響きそめる
人間のものである拍子。いま訪れてくるものが

まだ味わったことがないようにおまえには思われる。もうすでに
たびたび訪れてきたものが なにか新しいものとして
再来するかのよう。おまえがいつも望んでいながら、
けっして捉えられなかったもの、それがいまおまえを捉えたのだ。

冬ごしの槲の葉むらさえ、
夕日に映えて未来の鳶色のよう。
時おり微風が合図を交わしあう。

潅木の木立が黒い。だが 堆肥の山は
さらに豊潤な黒に色どられて牧場にたむろする。
一刻一刻が 過ぎ去りつつ より若くなる。

 (田口義弘訳)

 このソネットは「オルフォイスへのソネット第一部・21」と対をなすものです。

 春は来るのです。毎年同じように。しかしわたくしたちはいつでも同じようには聴こえない。いつでもその訪れは新しいものだった。そして物音の途絶えていたような冬が終わり、さまざまなものの歓びの音に満たされる時が来たのです。それなのにわたくしたちは、その春を充分に感知できた年はあったのだろうか?

夕日に映えて未来の鳶色のよう。

 これは、槲の若葉は若緑色ではなく、赤みを帯びたものということでしょう。多分夏には緑色になる葉だと思います。

 夕暮れの潅木の暗さ、冬を越した堆肥の山の黒、そこには温度をゆっくりとあげてゆく気配すらある。ああ。同じ季節にこれを書けたことはとっても嬉しいなぁ。

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