第三章 「『共に見る』ヴィジョン」 第4節 「国家(民族)の1つの夢」はいかがでしたでしょうか?「アメリカ人の夢(アメリカン・ドリーム)」が、それまでの民族間、宗教間の憎悪を乗り越えようとする、人類史で最も有望なヴィジョンだったのにもかかわらず、インディアンの人々と黒人を差別することを、その最初からしていた。「人間を上下2つに分けるウソ」が、いかに、ひとりびとりの無意識に深く入り込み、いかに慣性が高いか思い知らされる感じでしたね。
今日からは、第三章 「『共に見る』ヴィジョン」 第5節 「『共に見る』いろんな悪夢」に入ります。
アメリカ人の生き方が、その並はずれた勤勉さと温和さ、そのチームワーク、正確さ、それにマニュアル化を重んじる仕事ぶり、その独特な勇気と創意工夫した上での競争、その陽気で楽しいことと芸人魂とともに、1人の移民としてここに渡って来て、この本のあちこちで、また、以前書いた本の中で、私が記録してきた子どもたちを相手にする1人のセラピストであると同時に、子どもたちから学ぶ1研究者として、私を感心させるものでした。日常生活の儀式化が、アメリカ人の夢の将来にとって、まだまだ大事です。しかしながら、すでに仮定した対照的なテーマに加えて、私どもは「人間関係の親密さ」と「測りがたい程の大きさ」というテーマを、今や付け加えなくてはなりません。この2つのテーマは、(私どものチームでは)巨大な儀式主義に導いてきました。1つの国としての団結が進んだたけではなく、商業的・産業的な拡大に特色付けられる企業集団の発展に伴い、国内政治と市民宗教は、様々な新しい取引において、結びつき(談合)を深めました。その様々な取引は、いろんな名前の下で、国を確かにする道(国のアイデンティティ)において、基本的な要素として、“「新しいこと」と「大きいこと」は良いことだ”、とするアメリカ人の信条を、繰り返し主張しました。
観光ではなくて、ホームステイなどで、アメリカ人の暮らしに実際に触れた人は、アメリカ人の暮らしぶりをちょっと想像していただきたいと思います。 そうすると、ここでエリクソンが紹介している、アメリカ人の親切で、親しみ深く、陽気で楽しい感じなど、すぐに実感できるだろうと思います。その人間らしい暮らし、ちょっとものがありすぎかもしれませんが、ウィークデイは仕事に励み、ウィークエンドはボートなどを車につないで海や湖に出かけて楽しむ生活は、実に素晴らしいと感じます。大きな家と広い庭、広い道、広い公園、商業地区のビルの1階がギャラリーとして用いるゆとり、高速道路は本当のフリーウェイ(ただ)であること、話し合う文化、人生を楽しむ文化など。食料品やガソリンなどの生活必需品が実に安いこと、など、挙げればきりがないほど。
その暮らしには、「新しいこと」と「大きいこと」は良いことだ、とする信条があるというのも、実感できるだろうと思います。