千葉県人となって六度目の正月です。
県人となって以来、初詣は縁遠くなりました。
浅草に棲んでいたころはすぐ近くに浅草寺と浅草神社があったので、散歩ついでに出かけられました。目白にいたころは新宿も池袋も近いので、小田急や西武に乗って、江ノ島神社や秩父神社と少し遠出をしていました。
暮れの天気予報と大晦日の夕方まで吹いた強い風を思うと、荒れ模様の元旦になるのかと危惧していましたが、晴れて風もなく、静かな正月になりました。
齢とともに物臭になり、この数年、暮れの大掃除は端折って、気が向くとチョコチョコと小掃除を繰り返す正月です。
夕方四時半、空が薄暗くなりかけたころになって初詣に出動しました。
目指したのは歩いて十数分のところにある赤城神社です。通勤電車の車窓から真新しい社殿が朝日に照り映えているのを眺めていましたが、参拝するのは初めてです。
神社の脇に出る坂道を上っていると、おみくじを引いたらしい一団の賑やかな声が聞こえました。あまり参詣人もありそうもないと予想していましたが、さすがに正月だけあって賑わっているわい、と思ったら、人影はその一団だけで、彼らの去ったあとに境内に入ってみると、まったく人影はなし。
境内にはテントが三丁張ってあって、つい先ほどまで氏子が詰めていた様子が窺えますが、私が行ったときは裸電球が点っているだけでした。
創建は四百年以上も前の天正十七年(1589年)と伝えられていますが、由緒書きのたぐいが見当たらないし、社務所も雨戸を閉めて無人のようなので、よくわかりません。
そのわりに社殿が真新しいのは、武蔵野線の開通時に遷座を強いられたためだということです。
私が上ってきた坂道の反対側に形ばかりの参道があって、そこに神木らしい古木がありました。すでに暗くなりかけていたので、木肌を見ることもできず、椎なのか樫なのか判然としません。
お賽銭を上げて、一応は初詣を済ませましたが、なんとなく消化不良を起こしているような気持ちで、再び坂道を下りました。
少し前、友人から無患子(ムクロジ)という樹木があるのを教えられました。黒く堅い果実を実らせ、それがはねつきの羽や数珠に用いられると聞けば、なるほどと思いますが、樹を見たことはありません。
「ムクロジ」という語感は珍しいので、聞いたことがあれば憶えていると思うのですが、記憶にはありません。
樹木図鑑には、山地に自生する落葉高木と記載されていますが、関東地方では珍しい樹なのかと思って、Webをさまよっていたら、筑波実験植物園というところにあるようです。
そこからさらにさまよっているうちに、筑波山神社のホームページに辿り着きました。
筑波山神社に初詣するのもいいなと思ったのですが、アクセスを調べてみると、つくばエクスプレスの終点・つくば駅から、さらにバスで四十分! とあります。
ホームページを見つけたのは午後二時ごろ。
その時間から出かけたのでは、途中で暗くなってしまうと思い、筑波山神社への初詣は諦め、その代わりが赤城神社になったという次第でした。