元旦に行きそびれた筑波山神社に行くつもりで庵を出ました。
十二時には家を出ようと考えていながら、スタートが遅れました。今日が大学ラグビー選手権の準決勝で、テレビ中継があることを失念しており、正午のニュースが終わったあと、「スポーツショー行進曲」が流れ出して気がついたのです。
第1試合は慶應対東海大。どっちが勝っても関係ないが、コートを着て中腰のまま見入ってしまいました。
第2試合はメイジ対帝京大です。このまま見つづければ、終わるのは午後三時。筑波山へ行こうか、というような時間ではありません。
慶應対東海大戦の前半四十分が終わるころになって、意を決してテレビを消し、庵を出ることにしましたが、帰りにはスーパー銭湯に寄るつもりで、鞄にタオルや櫛を詰め込んだのに、肝心の入浴回数券を持って出るのを失念しておりました。50メートルほど歩いたところで思い出し、取って返したので、電車に乗ったのは一時半近くになってしまいました。
新松戸の隣・南流山でつくばエクスプレスに乗り換え。
時刻表に合わせて出ているわけではないので、きたのは途中駅止まりの電車。途中駅で次の電車を待って、終点のつくば到着は二時でした。
つくば駅A4出口。地下駅です。
シャトルバス乗り場に行くと、バス停には強風でロープウェイは運休という貼り紙がありました。
つくば駅からの道順でいうと、近いほうが伊弉諾尊を祀る男体山で、こちらに上るのはケーブルカー。遠いほうが伊弉冉尊の女体山で、こちらは運休というロープウェイ。
両峰に登らなければ意味がないといわれますが、今日の目的は登山ではないから、頂上に行けなくてもいいわいと思いながらも、なんとなく幸先がよくないというイメージを抱きました。
二十分後に出発するバスがきました。待っている客は私以外に一人もいません。
バス停を間違えているのかもしれぬと運転手に確かめると、間違ってはいないが、道路はものすごい渋滞で、終点の筑波山神社入口まで二時間はかかるという話です。事前に調べたところでは、普段の所要時間は四十分程度。
ずっと昔、どこか辺鄙な場所にある神社へ行くのに、バス(それもギューギュー寿司詰め状態の満員)の中で一時間以上、姿勢を変えることすらままならずに行ったことを思い出してしまいました。
五秒後、私はバス停に背を向けて歩き出していました。まあ、きてみなければわからぬことながらも、こんなことなら第2試合のメイジ対帝京大戦を視ているべきであったと思いながら……。
筑波山神社は諦めたものの、心残りがありました。南流山で手に入れた「初詣ラインTX」というパンフレットに、同神社で売っている「つくばね守」というお守りが紹介されているのですが、それが買えないことでした。
このように小さな写真(右下)が載せられているだけなので、しかと断言はできませんが、お守りは「はねつき」の羽を模した携帯電話用のストラップになっていて、先端には無患子(ムクロジ)の実を使っているように見えるのです。このお守りを無患子という樹の存在を教えてくれた友人にプレゼントしたら、悦んでもらえると思ったのですが……。
無患子の樹があるという筑波実験植物園は歩いて行ける距離ですが、こちらは四日まで休園とあらかじめわかっていました。
目の前にぶら下がっていた人参が、神隠しに遭ったように消えてしまうと、急に腹が減ってきました。
つくば駅にはクレオスクエアというショッピングセンターがあって、周辺の人の盛り場になっているのか、結構多い人出がありました。
建物は三階まであるのですが、なかなかエスカレーターが見つからない。やっと見つけて、レストラン街に行ってみると、二時半だというのに、どの店も並んで待つ人がいます。
並ばせて待たせるほど、ほっぺたが落ちそうなものを食わせてくれるのかネ、と思いつつ、ただたんに並ぶのが嫌なので、偶然見つけたロフトへ。
池袋のロフトと比較してしまう私が莫迦なのですが、品揃えは話になりません。しかし、我が新松戸にはロフトすらないのです!
ロフトでこんな陳列を見つけたので、見咎められないうちに、カメラを出し入れして、手早くパチリ。
筑波山のほうもロフトの窓から撮影するだけにとどまりました。
左手筑波山の前に立ちはだかるのは、つくばエキスポセンターにあるHⅡロケットの実物大模型(高さ50メートル)です。
クレオスクエアの中をゆっくりとひと巡りしたあとでもレストラン街は依然行列。
まともな食事は庵近くに帰ってから、と心を決め、サブウェイでチキンとポテトを食べて、小腹が空いていたのを満たしました。
何をしに行ったのかわからない日でしたが、一つだけ眼福がありました。
帰りの電車の柏たなか~流山おおたかの森間で、夕焼けの中に浮かび上がる富士山を眺められたことです。
それもただ夕景の富士山ではない。山頂に懸かった雲の一部だけに夕陽が当たって、まるで富士山が噴火しているかのように見えたのです。
カメラを持って席を立ったのですが、惜しむらくは、ここぞと思ってシャッターを押そうとすると、途中にある森や林、鉄塔などが邪魔をして撮影すること能わず、であったことでした。
つくばではショッピングセンターの中を歩いただけですから疲れたわけではありませんが、南流山に戻ってきたときにはすっかり暗くなっていたので、スーパー銭湯へ足を延ばすのは取り止め。
さてさて、気にかけていたメイジは対抗戦時のような零封こそ免れたものの、また帝京大に完敗。
春は依然遠いようです。