駒師「日向」のブログ 本店

プレーヤー目線で作る
将棋駒作家のつぶやき

栄作 源兵衛清安 ~その6~

2016年08月28日 | 将棋駒製作
前回お伝えしましたとおり、

「忙しさ」が伝わってくる写真です。


ちなみに、国語の先生ではないですが、

忙しいという字は

「心」を「亡くす」と書きます。

私の先輩で

「俺は忙しい」を連発する人がいますが、

本当に仕事が出来る人は忙しいと言わないそうです。

その心を亡くした状況に遭遇するたび、

彼に対する尊敬の念が減少しますが、

自分も気を付けたいものです。


さて、話を戻します。

駒制作の過程において

目止めと漆入れは簡単そうで、

実は共に気が抜けない工程です。

写真を見る限りでは、作業は、

刷毛(ハケ)を使って一気に目止めを行い、

また別の刷毛を使って一気に漆を塗った感じです。

これがピンホールを発生させる原因になります。


目止め剤と漆は共に液体ですが、

その中に空気が含まれています。

塗布後、十分に空気を抜かずに乾燥の工程に入ると、

空気を覆っていた目止め剤や漆の膜が破裂し、

ぽっかりと穴が開きます。

これがピンホールです。

従って、塗布は刷毛ではなく細かい筆などを使用し、

液体中の空気を丁寧に除去するのがコツです。


ただし、写真が撮られた時期は、

駒師が忙殺されていた頃です。

自分一人ではとても間に合わないので、

職人さんやパートアルバイトを雇っていた

工房もたくさんあったそうです。

丁寧に時間をかけている暇なんて

なかったのだと思います。

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