私は「マネジメント」が好きです。強い興味もあるし、自分の中で得意なことの一つだとも思っています。
「マネジメント」の適切な日本語訳が無いので、おそらく日本人の大多数はマネジメントが真にどういうものであるのか分かってはいないと思うし、もしかすると私の理解も欧米の人たちとの理解とは同じではないのかもしれません。
(1) マネジメントを、「やりくり」と説明する方が結構います。これはマネジメントの一面を適切に表しているとは思います。種々の制約条件がある中で、結果をよくするために、出来得る工夫をしてやりくりする。いくらやりくりしても、結果がよくならないとマネジメントとは言わない。
(2) マネジメントはこれだけでなく、制約条件を固定のものと考えず、制約条件そのものを時間、お金をかけて、仕事をやりやすいように変更していくことも含んでいると思います。
上記の(1)はとにかくよい結果を得るために、現状に不満を言うのではなく、ベストを尽くす行為。(2)は、将来的に全体が良くなっていくように哲学、理念に基づいて戦略的に動くイメージ。
私の仕事でも上記の(1)、(2)をミックスして行うわけですが、今朝、子供たちのお弁当を作りながら、これらのマネジメントのことをふと思いました。
平日は忙しいわけです。パリでは毎日お弁当を作るわけではありませんが、朝早起きして、子供たちのお弁当と、さらに同時に夕食の準備もしなくてはならないときもあります。一日だけならまだしも、その翌日の材料のことなどもそれなりに考えてマネジメントする必要があります。料理をすることは食材の買出し、ストックと切り離しては考えられませんから。これは、上記の(1)のマネジメントになります。コストのことも考えながら、限られた時間の中で、おいしい食事を家族が食べられるようにする。
一方で、日本人がパリでそれなりに満足できる食生活をするためには、炊飯器も必要だし、お米やらふりかけやら、何かといろいろ必要なわけです。9月に日本のヨドバシカメラで炊飯器を買って苦労しながら家に持ち帰ったり、それをパリに持ってきたり、持ってきても変圧器がないと動かないので3万円以上もする大きな変圧器を購入して持ってきたり、という苦労を思い出します。また、何度も日本と往復していた時に、ふりかけやら、炊き込みご飯のもとやら、を相当に買い込んで、何度かスーツケースで運んだのも今や懐かしく思います。これらは、(2)のマネジメントになります。困ってから考えるのではなく、先を見通して手を打っていく。
非常に乱暴な言い方をすれば(間違っているかもしれませんが)、(1)は女性が得意で、(2)は男性が得意でしょうか。あくまで一般的なイメージの話です。(実態に基づいて悪口を言えば、男は(1)が苦手で、(2)が得意と思い込んでいるが、実は(1)も(2)も満足にできない男が山ほどいる。)
世の中でマネジメントがいろいろなところで論じられますが、男がマネジメントを論じることが多いので、(2)のタイプが多くなりがちに思います。(2)にしても、本当に共感できる哲学、理念で将来像を示す方は限られていますが。
マネジメントにおいては、(1)も(2)も両方大切です。
私は(1)と(2)の両方が大切であることを生活やこれまでの経験から、骨身に染みて理解していると思っています。ですから、いつのまにか私の研究もそのような方向に向かってきています。
構造物の品質確保にしても、(2)の意見や研究は非常に多いのですが、(1)が少ない、もしくはほとんどない。
現在、復興道路でチャレンジしている目視評価、施工状況把握チェックシートの活用などは、どちらかというと(1)のタイプです。こういう泥臭いことをやる人がほとんどいないように思います。
一方で、フィロソフィーも非常に重要で、結局、我々はどこを目指すのか、という哲学、理念をいつも議論し、意識しておく必要があるのだと思います。
マネジメントについては、私はまだまだ赤子のような存在ですが、これからはかなりの時間をかけて勉強し、研究し、実践していくことになると思います。
近いうちに、私なりのマネジメントの定義もしっかりと確立できるように努力したいと思います。