2022/06/18に再コーティングした主鏡を取り付けてから2年近くが経過しました。
主鏡、結構汚れてきました。
レンズ洗浄液やらアルコールやら高性能洗浄スプレー3310(工業用)など、もろもろ主鏡をきれいにする努力はしてきましたが、なかなか満足のいく結果は得られず、少しずつ汚れが蓄積してました。
ここ一年間ほど、望遠鏡の動作は安定したにも関わらず、いまいち良い写真が撮れていない。
シンチレーションに恵まれないため、という可能性を第一に疑っています。
しかし、もしかしたら、、、主鏡の汚れが関与している余地があるのかもしれない。
主鏡を一度、取り外して洗浄してみたい。
しかし、この主鏡、金属の枠と合わせて50kg前後あるものと思っています。
正確な重量を測れてませんが、(そうか、観測小屋に体重計を持ち込めば良いのか!)26kgのAXD本体の2倍くらいありそうに感じています。
1人ではとても取り外しできない。
もちろん、再度、主鏡を組み付けることも1人ではできない。
友人に助力を願いました。
外すにあたって、いろいろ準備があります。
50kgの主鏡を外すと望遠鏡の前後バランスが崩れます。
また、望遠鏡とウェイトのバランスも崩れます。
主鏡を外しても望遠鏡の対物端が落下しないように、脚立にロープをかけて支えを作ります。
主鏡を外してウェイトが落下しないように、ウェイトの下にも支えを置きます。
(この写真、ちょっと歪んでいるのは、スマホのパノラマ撮影機能を使って撮影したためです)
男2人が必死になって重量物を扱っているので、外す瞬間の写真はありません。
外すにあたって、元に戻す時の向きがわかるように、主鏡の金属枠と望遠鏡本体にマジックで印をつけました。
外した主鏡(とその金属の枠)
主鏡を畳に向けてひっくり返します。
金属の枠の厚さ(5mmくらい?)があるので、主教が直接畳に接する心配はありません。
光軸調整を行う引ネジを全て外すと主鏡裏側の円盤が外れます。
円盤の向きがわからなくならないように、金属の枠と、円盤の引ネジの穴の一つにマジックで印をつけました。
黒い紙と、主鏡を金属枠に押し付けて固定するネジを受ける3枚のアルミ版を外すと主鏡本体(ガラス)が露出します。
主鏡の金属枠を外します。
出てきた主鏡。
大きいです。
ガラスの厚さが75mmもあります。
が、やはり主鏡本体よりも金属の枠の方が重たいです。
主鏡本体は多分ですが、15kg弱ではないかと感じます。
主鏡は冷たいので、すぐに結露しました。
水道水をかけて、食器洗い用の中性洗剤で洗います。
レンズクリーニングペーパーで表面を撫でて、汚れを端に寄せます。
水道水をかけて、洗剤を流します。
水が流れ落ちるように、主鏡の片側を高くして傾斜をつけてあります。
(主鏡の下、手前は2×4材が1本、奥側は2本積み重ねてある)
おぉッ!きれいになった。
けど、このまま乾燥させると水垢が残ってしまう。
薬局で売っている精製水を流してリンスします。
次に、早く乾くように無水エタノールを流します。
しばらく乾燥させて、完全に乾き切るのを待たずに元の状態に組み上げました。
朝、望遠鏡の中を覗くと、普段から結露していることがあるので、少々濡れていてもいいだろう、と。
望遠鏡の乾燥空気装置をつけっぱなしにして寝ても、翌朝、結露していることすらあります。
この場所はこの主鏡にとって、けっこう過酷な環境なのかもしれません。
理想的には望遠鏡部屋に除湿機を置いて、ずっと除湿していればいいのでしょうけれど、なんせ建物が古いので、一ヶ月単位で除湿機を回しっぱなしにするには、電気系統に一抹の不安を覚えます。
2人で主鏡を巨大ニュートンに組み付けました。
指を挟んで怪我をしないかヒヤヒヤしました。
うっかり足の上に落としたら骨折しますし、破損したら代わりとなる主鏡はおそらくないでしょう。
そのあとは、主鏡を垂直に立てて、光軸調整を行いました。
調整後が下の写真。
完璧ではないですが、最低限の用を成してくれるでしょう。
Ocal electronic collimatorのソフトウェアがすぐにフリーズするので、かなりイライラしました。
おそらく全世界のユーザーがイライラしていることだろうと思って、自宅に戻ってから確認すると、新しいソフトウェアが公開されている。
早速ダウンロードしました。
次回はもう少しストレスが減ることを期待しています。
早速、主鏡洗浄の効果を確認したいところでしたが、うっすらとモヤのかかったシャキッとしない夜空でした。
作品を狙いに行く夜空ではないですが、少なくとも動作チェックはできるし、光軸調整ができているかの確認も行うことができます。
まずは子午線を越えたばかりのベテルギウスでピント合わせ。
バッチリです。
お次はf=1,200mm, F15のガイド鏡のピント合わせ。
同じくベテルギウスで。
最初のキャリブレーション
西の空だし、まあ、こんなものでしょうか。
子午線の西側、天の赤道付近での最初のガイド。
Periodic errorが見てとれます。
ガイドアシスタントの結果
おお、極軸のずれが観測されなかった!
バックラッシュもほとんどない!
写真は、というとこんな感じ。
EOS Ra
ISO 2500, 300 sec
四つ端の小さな星の伸び具合はほぼ均一になってます。
僕にとっては許容範囲。
今度、コマコレクターを使ってみようかな?
ガイドアシスタントで極軸のずれが観測されなかったので、遊び心でDECガイドをキャンセルしてみました。
4分半まで素晴らしい動作でしたが、何やらガクッとした動きがあったらしく、写真はブレ写真となりました。
何によるギャップなのか、現場を取り押さえれてませんが、この巨大赤道儀、時々こういうガクッとした動作をします。
撮影の大きな支障にはなっていないのですが、気になります。
この現象の原因、今後、究明できるかな?
場合によっては、こなれて自然に消滅してしまうかもしれません。
素敵な夜空を待ちたいと思います。