巨大ニュートンの光軸調整をしていて、ふと思ってしまったんです。
なぜ斜鏡から調整するんだろう?
調整した斜鏡に主鏡を合わせて、光軸調整するということは、斜鏡の位置が間違っていたら、主鏡の調整が間違ったことになる。
そしてその斜鏡は、1mm程度位置がズレていてもそれを判
断するのがとても難しい。
そもそも、星の光を集めるのは主鏡です。
正しく調整された主鏡に斜鏡を合わせるのが本来なのでは?
最初に主鏡を正しく調整するにはどうすればいいのか?
主鏡を正しく前に向ければいい。
多分ですが、円柱の形をした鏡筒の中心軸と、主鏡の中心軸が一致すればいいのではないのでしょうか。
主鏡の中心軸という言葉があるのかどうか存じませんので、僕が言いたいことを解説します。
主鏡をひっくり返した裏側は円です。
その円の中心から伸ばした垂線のことを主鏡の中心軸と僕は表現しています。
鏡筒の中心軸は、鏡筒を円柱に例えた場合、その円柱の中心軸になります。
単純化して図に描くとこんな感じ。
ちなみに、下の写真は光軸調整を完了したあとに、接眼筒の中心から見えた光景です。
わざとアンダー露出にしています。
斜鏡に映った主鏡です。
スパイダーの固定金具の高さが四方で異なるのがわかるでしょうか?
このような光景が見えた場合は、主鏡の中心軸と鏡筒の中心軸は間違いなく一致してません。
では、主鏡の中心軸と鏡筒の中心軸を一致させるにはどうしたらいいか。
こんなのはどうでしょう?
斜鏡を取り外し、スパイダーの中心にある、斜鏡の引ネジの穴をカメラに覗かせる。
カメラが正しく主鏡の方向を向いていれば、カメラの画像の中心に、主鏡のセンターマークが見えるはずです。
主鏡のセンターマークの中心にカメラが見えれば、主鏡の中心軸と、鏡筒の中心軸が一致したことになるのではないか。
図に示すとこういうことです。
実際にやってみました。
まず斜鏡を外します。
斜鏡の引ネジの穴からiPhoneのカメラでのぞいた光景
望遠鏡を垂直に立てて、カメラに穴を覗かせます。
使ったカメラはOCAL electronic collimatorです。
斜鏡の引ネジの穴からカメラがのぞいた光景です。
主鏡のセンターマークの中にカメラレンズが見えるように調整しました。
これで鏡筒の中心軸と主鏡の中心軸が一致するはずです。
しかし、よく見てください。
4隅に見えるスパーダーの固定金具が不均一です。
上と右の固定金具が根元まで見えるのに対して、下と左の固定金具は根元が見えません。
これは明らかに光軸がずれています。
主鏡のセンターマークの中にカメラレンズが見えるように調整したのに、なぜ?
引ネジの穴が鏡筒の中心からズレている??
スパイダーの固定金具を観察してみたら、固定金具の高さが不均一になってました。
ねじ山が、片方が3.5個、反対側は5.5個見えます。
これを4個ずつになるように調整しました。
もう一つ、考えられる原因がありました。
主鏡のセンターマークが、主鏡の中心にない可能性。
なぜなら、センターマークを貼り付けたのが、僕自身だからです。
それを確認したのが下の画像。
(注意!斜鏡の引ネジの穴から見た画像ではありません。この写真は接眼筒から見た画像です。斜鏡に映った主鏡の写真です。)
主鏡の輪郭に重なった青い円の中心はピンク色の十字の交点になります。
確かにセンターマークが主鏡の中心から少しズレている。
というわけで、手作り感満載のこの巨大ニュートンに関しては、センターマークの中心とカメラレンズは一致しないことがわかってしまいました。
ではどうするか。
OCAL electronic collimatorが表示する青い円と主鏡の輪郭が一致している分には、ピンク色の十字の交点が主鏡の中心になります。
そこにカメラレンズの中心がくれば良いことになります。
が、実は、現場でそのことを思いつきませんでした。
なので、斜鏡の引きネジの穴からカメラで覗き込んだ画像で、青い円とピンク色の十字を表示した画像がありません。
仕方がないので、撮ってきた写真に、カメラレンズを中心とした水色の円を書き込んだのがこの写真です。
ほんの少しだけ、主鏡の輪郭と水色の円がズレています。
つまり、まだほんの少し光軸がずれている。
もう一つの要因。
斜鏡の引きネジの穴が正確に鏡筒の中心にあったとしても、カメラがちゃんと穴の「中心」からのぞけていない可能性。
カメラ、手で置いてます。
一応、カメラ画像を見ると、周囲に引きネジの穴が見えるので、それができる限り均一になるようにしたつもりですが、それにも限界というものがあります。
つまり、この記事を書いている段階で、巨大ニュートンの斜鏡の引ネジの穴が、鏡筒の中心軸から少しズレた位置にあるということです。
OCAL electronic collimatorの青い円とピンク色の十字を表示することを、現場で気付けていたら良かったのですが。。。
次回の宿題になります。
主鏡の軸が不完全な状態ですが、これに続く手順はそんなに大きく変わらないので、続く手順を記載したいと思います。
鏡筒の中心軸と主鏡の中心軸が一致したら、あとは斜鏡のみを調整して、主鏡からの反射光を正しく接眼部に導けば良いことになります。
その手順を解説していきます。
カメラ画像を見ながら、センターマークとカメラレンズが大まかに一致するように調整したのが下の画像です。
青い円が主鏡の輪郭より下側に来ています。
☆最終目標は、ピンク色の十字とカメラレンズが一致し、かつ、青い円が主鏡の輪郭と一致することです。
この画像を見ると、斜鏡をほんの少しスパイダー側に引き上げてやれば、つまり、この画像で下の方向に斜鏡を動かしてやれば、主鏡の輪郭と青い円が一致するようになります。
斜鏡の引ネジを時計回りに回します。
斜鏡を引き上げすぎました。
今度は青い円が主鏡の輪郭よりも上に来てしまいました。
今度は斜鏡をほんの少し主鏡側にズラしてやります。
この操作は、引ネジを反時計回りに回します。
これが目指していた画像になります。
主鏡の輪郭と青い円が一致し、ピンク色の十字の交点とカメラレンズが一致します。
少し広角にして、周囲まで見えるようにした画像です。
オフセットをしていない斜鏡なので、斜鏡に映った主鏡は斜鏡の中心に来ません。
主鏡側に偏っています。
(なお、斜鏡の輪郭がピンク色の十字に対して左右対称になっていないのは、パイプを45度に切断して手作りされた斜鏡ケースに斜鏡が少し傾いて収まっていることが原因の一つだと思われます)
オフセットの記事でも書きましたが、巨大ニュートンは斜鏡がオフセットされてません。
斜鏡回りの光路を拡大するとこんな感じになります。
やはり斜鏡に映る主鏡像は、斜鏡面の下側(主鏡側)に偏ります。
一般的に行われているように、斜鏡を調整してから主鏡を調整するのではなく、調整された主鏡に、斜鏡を合わせる。
いかがでしょうか?
斜鏡を調整してから、主鏡を調整するという方法がどういった経緯で広がったのか、存じません。
この方法で正しく光軸が調整できるのは、斜鏡が正しく調整できた場合です。
しかし、斜鏡を正しい位置に自信を持って調整することが猫五郎にはできません。
光軸修正アイピースからのぞいた斜鏡って、小さくてみづらくないですか?
まして斜鏡に映った主鏡の状態を評価しろって言ったって、難しく感じます。
また、光軸修正アイピースの覗き穴、小さいですが、それでものぞく角度によって見える光景が変わってきます。
そういう意味ではOCAL electronic collimatorは視点を固定できるし、見える画像を拡大・縮小できるので画期的です。
あと、OCAL electronic collimatorが正しく機能するためには、斜鏡に映る主鏡の中心が、斜鏡の中心に来るようにオフセットされていることが大前提になります。
多分、そのように設計されているとは思うのですが、反射望遠鏡メーカーの説明書を端から端まで読んでも、そんなことはどこにも書いてありません。
あとは、猫五郎式、光軸調整法で、調整した望遠鏡で、星像がどれだけ改善するか。
今後のお楽しみです。
梅雨入りしてしまいましたので、いつ確認できるかわかりませんが。。。
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(追記)
7月に、梅雨の一瞬の晴れ間をゲットしてきました。
これがその時撮ったM27 アレイ星雲です。
斜鏡の引ネジの穴が、鏡筒の中心軸から数mmズレた状態での撮影になりますが、どうでしょ?
猫五郎的には、こんなもので十分満足なのですが。
それでも、一度はちゃんと調整した状態で撮影してみたいので、猫五郎の挑戦は続きます。